格段に上がったスペックと……

 ここで新型DB12のスペックを簡単に紹介すると、フロントに搭載されたメルセデスAMG製4.0リッターV8ツインターボエンジンは基本的にDB11そのままだが、大型のターボチャージャーを装着して過給圧を高めるなどして、510ps/675NmのDB11を大幅に凌ぐ680psと800Nmを達成。0-100㎞/h加速は4.0秒から3.6秒へ、最上速度は309km/hから325km/hへと、いずれも格段に速くなっている。

 こうしたスペックを知ると「つまりDB12は、DB11よりも高性能を重視した、どちらかといえばピュアスポーツに近い立ち位置なわけね」と思い込んでしまいそうになるが、南フランスで行われたDB12の国際試乗会に参加して、これが大きな見込み違いであることに気づいた。

 まずは乗り心地が見違えるようによくなった。タイヤの路面への当たりが柔らかくなったうえに、うねるような路面にもサスペンションがしなやかに追随してくれるため、足回りからゴツゴツしたショックが伝わることなく、滑らかな乗り心地が味わえるのだ。

 それでいながら、荒れた路面でもボディがフラットな姿勢を崩さないのは、ビルシュタイン製DTXダンパーを装着した影響が大きいと、前述のオーウェンは教えてくれた。ちなみにこのDTXダンパー、DB11に用いられていたものよりも減衰力の可変幅が大幅に増えているのが特徴という。さらに、ダンパー制御にスカイフック理論(ボディを天からつり上げた状態を目指したサスペンション制御のこと)を採り入れたことも、ボディをフラットに保つうえで役立っているらしい。

 最高出力で170ps、最大トルクで125Nmも引き上げられたV8エンジンは、そうしたスペックから受ける印象とは裏腹で、実にレスポンスがよく、しかもパワーの立ち上がりが直線的で扱い易い。アクセル操作に対する小気味いい反応は、まるでよくできた自然吸気エンジンのようでもある。

 ボディをフラットに保ちながらも路面への追随性に優れた足回りと、レスポンスとリニアリティが良好なパワートレインが生み出す走りがどのようなものかといえば、市街地やハイウェイではごくごく快適ないっぽうで、ワインディングロードではレスポンスのいいハンドリングとパワートレインのおかげで俊敏なコーナリングが楽しめるうえ、しなやかな足回りが安定したグリップを生み出してくれるので、安心してタイヤの限界付近を試したくなる。

 つまり、足回りの動きにもパワートレインの反応にも、ちょっとギクシャクするところのあったDB11では、とても望み得ないようなスムーズで流れるようなコーナーリングをDB12は実現していたのである。

 いっぽうのエクステリアデザインは、DB11をベースにしながら、フロントマスクを大型化したり全幅をワイドにすることでより魅力的に進化。操作性を一新したコクピット周りも、インテリアのクォリティ感が劇的に改善されていて目を見張らされた。

「直接的なライバルはベントレー・コンチネンタルGTとフェラーリ・ローマ」とアストンマーティン広報のケヴィン・ワッツは語っていたが、快適性とハンドリングの絶妙なバランスという意味でいえば、私にはDB12がもっとも魅力的に映る。