メルセデス・ベンツの高級車らしいEV
今回、試乗したEQE350+は、やはり記憶していたとおり、日本で試乗したEQS450+より微妙にソリッドな乗り心地だったけれど、段差を乗り越えても足回りがブルブルすることなく、しっかりとした感触を伝えてくれた。もっとも、乗り心地が“硬め”というのはEQSと比較した場合の話であって、絶対的には十分にソフトだし快適。その割にワインディングロードを走ってもクルマの姿勢が不安定になったりしない。この辺は、バッテリーをフロアに敷き詰めた低重心設計のおかげだろう。
そしてもちろんキャビンは静かで、いざとなれば首がのけぞるくらいの加速感をもたらしてくれる。つまり、なにからなにまで国際試乗会で感じた印象、そのままだったのである。
では、EQSとの違いはなにかと問われれば、前述した某エンジニアのコメントから「ボディの局部剛性とゴムブッシュのバランスの問題と推察される」としか答えようがないのだけれど、メルセデスのことだから、時間が経てばきっと熟成されるものと期待したい。正直、症状としては、それほど深刻なものではないのだから……。
それにしてもEQEやEQSに乗って驚かされるのが、そのインフォテイメント・システムの充実ぶりである。
たとえば、ナビゲーションシステムの機能として用意されたエレクトリック・インテリジェンス・ナビゲーションは、ルート案内の際、ルート中の勾配情報、充電ステーションの位置情報、車両の充電状況や気温情報などから総合的に判断し、どこで充電すべきかを含めたルート案内をしてくれるというもの。この機能ひとつとっても、膨大な量のソフトウェアが必要となることは容易に想像できる。
しかも、こうしたドライバーが直接、目にすることのできる機能だけでなく、モーター出力やバッテリー管理など、エンジン車であれば必要のなかったコンピューター制御が大幅に増えていることは明らか。もちろん、EVとすることで不要になったソフトウェアもあっただろうが、EQEに乗っていると、極めて高度なコンピューターとソフトウェアに守られながらクルマを操っているという印象が極めて強い。そして、エンジン車に長年乗り続けてきた方なら間違いなく「時代は変わったなあ」と痛感することだろう。
そのいっぽうで、EQEにはメルセデス製サルーンの本筋というべき快適な乗り心地や静粛性といった美点が色濃く感じられた。いや、それらはEVになったことで、より強化されたといってもいいくらいだ。
コンピューター化と、機械本来の作りのよさ。メルセデスには、今後もこのふたつを絶妙のセンスでバランスさせてくれることを願いたい。