文=酒井政人
三浦はブタペスト世界選手権の代表が内定
6月上旬に開催された日本陸上競技選手権。男子3000m障害と同5000mでは学生ランナーたちが〝夢の舞台〟を追いかけた。
男子3000m障害は学生長距離界のスピードキング・三浦龍司(順大4)が圧巻の走りを見せる。2周目で先頭に立つとペースを上げて、1000mは2分47秒。残り3周からは独走となり、2000mを5分37秒で通過した。すでに勝負を決めていたが、三浦は攻め続けた。
ラスト1周はハードリングを取り入れて、スピードアップする。水濠を跳び越えた後につまずく場面もあったが、8分21秒41で悠々と3連覇を達成。すでに参加標準記録(8分15秒00)を突破しているため「3位以内」という条件を満たして、ブタペスト世界選手権の代表が内定した。
三浦が高速レースに持ち込んだこともあり、2位の砂田晟弥(プレス工業)が日本歴代10位の8分26秒36。3位に食い込んだ菖蒲敦司(早大)も学生歴代5位の8分28秒16をマークした。
ダイヤモンドリーグのパリ大会で日本新記録
三浦は箱根駅伝2区で区間12位に終わると、今季のトラックシーズンも「悪い流れで来ていた」とさほど調子が上がっていなかった。それでも5月中旬の関東インカレ1部5000mを制すと、3000m障害の初戦となった5月21日のセイコーゴールデングランプリ横浜を8分19秒07で完勝した。
「その場の判断でロングスパートかショートスパートにするか決めようと思っていました。今回は障害が合わなかった感覚もあったので、ラスト150mから切り替えました。8分20秒を切るのを目標にしていましたし、まずまずの走りだったかなと思います」
手応えをつかみつつあった三浦。日本選手権では中盤の落ち込みを抑えて、ロングスパートも炸裂した。レース後には、「セイコーゴールデングランプリよりも意識的に脚を回すことができて、イメージに近いことができ始めたかなと感じています。またブタペスト世界選手権の出場権利をつかめたのがうれしいですね」と微笑んだ。
三浦は2021年の東京五輪で7位入賞の快挙を果たすも、昨年のオレゴン世界選手権は予選で敗退。3度目となる世界大会で〝成長した姿〟を見せることができるのか。
「昨年の世界選手権はラストで攻め切れなかったのが決勝進出を逃した大きな原因だと思っています。ダイヤモンドリーグのパリ大会に出場する予定なので、そこでファイナルの切符を獲得したいですし、世界選手権のリハーサル的なことにもなる。手応えを確認して、自分の走りに対して自信を持って(ブタペスト世界選手権に)臨めるようにしたい」
日本選手権を終えた三浦はすぐに渡仏。6月9日のダイヤモンドリーグ第4戦ミーティング・ド・パリに参戦した。そして世界の〝本気〟を目の当たりにすることになる。
男子3000m障害は世界大会で3回連続して銀メダルを獲得しているラメチャ・ギルマ(エチオピア)が爆走した。レースは1000m2分37秒7、2000m5分12秒5という超ハイペースで進む。ペースメーカーが外れた後、独走態勢となったギルマが世界記録(7分53秒63)を19年ぶりに塗り替える7分52秒11を叩き出したのだ。
一方の三浦は入賞ライン付近でレースを進めると、徐々に順位を上げていく。そしてラスト1周で2位争いに加わった。終盤の激戦を制して、8分09秒91をマーク。東京五輪の予選で樹立した日本記録を0.01秒更新した。
ギルマは別格だが、三浦はラスト勝負も世界で通用することを証明したといえるだろう。昨年のダイヤモンドリーグ・ファイナルで4位の快挙を成し遂げており、ブタペスト世界選手権でも〝メダル争い〟に加わる予感が漂ってきた。