高温山廃酛の一段仕込み「AFS」

「AFS(アフス)」は、開発者3人の頭文字。3代目蔵元の荘司勇が、当時の技術顧問だった古川菫、新潟県の住乃井酒造の安達源右エ門の協力のもと、完成させた

 さらに1971年に誕生した、超ユニークな日本酒が「AFS(アフス)」。この酒は、高温山廃酛の一段仕込み。通常の日本酒の造り方は“三段仕込み”といい、3回に分けて酒母に蒸米、米麹、水を足していくことで安全に発酵を進めていく。しかし、一段仕込みはこれを1回で完了させる。つまり、一段仕込みの正体とは、酒母そのもの! 高温山廃酛の酒母を醪(もろみ)に見立て、アルコール度数とバランスを整えて絞る。その味わいは“濃厚多酸”を特徴とする。

1971年にファーストヴィンテージが誕生した「AFS(アフス)」は、1000リットル容量のタンクで630リットルの醪を仕込む。少量仕込みだからこそ、一段仕込みでも安全に発酵が進む

「AFS(アフス)」シリーズのなかでも、今回の『AFS Stratae(アフス ストレータ)』は、仕込み水の代わりに、前年造った酒を投入して仕込むという「貴醸酒」だ。毎年、前年の同酒をつぎ足しながら熟成させている。

「歳月を重ねた濃厚さが持ち味なので、ゆっくり少しずつ飲んでいただきたいと思います。わたしはとくに、オレンジにチョコレートをかけたオランジェットと合わせるのがおすすめです」と、荘司さん

 スモーキーな香りの燻製や、上質な豚肉の脂身との相性も抜群! 多様な日本酒が飲める現在でも、追随を許さない木戸泉ならではの甘美な世界をゆっくりと楽しみたい。