エース欠場の日体大は75年連続出場を死守できるか

 前回、駿河台大が初出場をつかんだように新興勢力が次々と現れている。そのなかで初出場以来〝連続出場〟を積み重ねてきたのが日体大だ。箱根駅伝は1949年に初参戦すると、74年間もタスキをつなぎ続けてきた。昨年の予選会は3位で難なく通過したが、今回は〝最大のピンチ〟を迎えている。

 前回出走した上位10人のうち5人が卒業。さらに前回チームトップの藤本珠輝(4年)が登録メンバーから外れたのだ。

 藤本は1年時の予選会でチームトップの個人14位に入るなど、ルーキーイヤーから主力として活躍してきた。昨季は関東インカレ男子1部のトラック長距離種目で日本人唯一のダブル入賞(5000m6位&10000m4位)を果たすと、6月には5000m(13分32秒58)の学内記録を42年ぶりに更新。名門・日体大のエースと呼べる選手になった。

 今年の箱根駅伝は花の2区で順大・三浦龍司を含む5人を抜き去り、5月の関東インカレは1部ハーフマラソンでメクボ・ジョブ・モグス(山梨学大)が保持していた大会記録を塗り替えて完勝。「箱根駅伝の8以内を目指して、チーム一丸となって頑張っていきます」と語っていた。

2022年1月2日、第98回箱根駅伝、往路2区を走る日体大の藤本珠輝(左)と順大の三浦龍司(右) 写真=アフロ

 エースの欠場はチームの雰囲気に大きく影響する。意気消沈する場合と、反対に一致団結してとてつもない力を発揮するケースがある。今回の日体大はエントリーのうち半数は1・2年生だが、〝伝統の力〟でエースを箱根路に連れていくことができるのか。

 

3年ぶりに国営昭和記念公園で開催

 日体大を含めて、すでに5校を挙げた。順当なら残りの通過は5~6校だ。ここからは大混戦で、国士大、中央学大、山梨学大、駿河台大、専大、拓大、大東大、筑波大、上武大、城西大、立大、東農大、日大、麗澤大などが〝狭き門〟を目指すことになる。

 このなかで中央学大、大東大、日大は6月の全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会を突破しており、特に大東大は前評判が高い。今季から同校OBで指導者として仙台育英高を全国高校駅伝の優勝に導いた真名子圭監督が就任。4年ぶりの箱根復帰に期待がふくらんでいる。

 予選会は「より速く」と同じくらい、「遅れない」ことがポイントになる。国士大、山梨学大、駿河台大、専大、拓大、大東大、上武大、城西大、日大はケニア人選手を擁するチーム。留学生でタイムを稼ぎ、他の選手は集団走などを駆使して、うまくまとめる戦略で臨むことが可能だ。一方、ボーダーライン付近にいる日本人選手だけのチームは〝厳しい戦い〟が予想される。そのなかで立大が難関突破を果たせば、大会史上最長の55年ぶりの復活となる。

 一昨年と昨年は新型コロナウイルス感染防止対策として陸上自衛隊立川駐屯地内の滑走路を周回する公認コースで行われたが、今年は3年ぶりに従来のコースに戻る。国営昭和記念公園内は起伏があるため、終盤の〝逆転劇〟があるかもしれない。

 箱根駅伝予選会は10月15日の9時25分から日本テレビで生中継される(スタートは9時35分)。今回はどんなドラマが待っているのか。天国と地獄をわける戦いは見逃せない。