結局、フランチャコルタってどういうワインですか?
こんなにやって、採算がとれるのか? ビジネスになるのか? と不安になるけれど、ベラヴィスタはこれで成功しているのだ。無用の心配なのだろう。
モレッテッィさんは、そろそろお昼だから、と運営するホテル『ラルベレータ』併設のレストラン『LeoneFelice Vista Lago』に取材陣を招待してくれた。
ここで僕は「フランチャコルタってどういうワインですか? 」とストレートに聞いてみた。
ベラヴィスタの成長を支えた醸造家、マッティア・ヴェッツォーラは2021年末で引退した。現在は、ヴィットリオの娘、フランチェスカ・モレッティほか、4人醸造家がその哲学を受け継いでいる。質問した相手はその4人の醸造家のひとり、アレッサンドロ・マリネッロさんだ。
「フランチャコルタの特徴ですか? 複雑だけれど陽気で、どんな食にも合うのがフランチャコルタ! 情熱が生み出すワインです。」
なんとも明快な答えではないか。
「じゃあ、もっと、ドラマチックで大げさなワインを造ろう、みたいなつもりはないんですか?」 と聞いてみると
「このロゼなんか、最高でしょう? 僕はピノ・ノワールが好きで、これは40%がピノ・ノワール。肉料理にも合いますよね。クリオマセレーションでいい色が出ている!」
と、予想とはちょっと違う答えが返ってきた。
とはいえ、たしかにおっしゃる通り。お料理とともに味わった2017年のロゼは最高だった。
ピノ・ノワールならではの旨味と美しい酸味は本当に見事。精密でありながらも、優しい。
今年は日照り続きのフランチャコルタ。このときもかなり暑くて、昼食はテラスで食べていたから、冷えたロゼもすぐに温まってきたのだけれど、それでバランスが崩れてしまう、ということはなかった。とてつもない情報量を持ちながら、そこに余裕がある。粒ぞろいという言葉があるけれど、大量の粒がみっちりつまっているのではなく、ひとつひとつの粒の間に意図的な空隙を設けている。それゆえに懐が深く、環境の変化や食との相性に寛容。そんなワインだとおもう。たしかに「陽気でどんな食にも合う」を地で行っていた……
ベラヴィスタでの経験は、控えめに言っても「生きててよかった」くらいの水準だった。にもかかわらず、僕の謎はさらに深まった。
なぜ、アレッサンドロのような若者が、ここでワインを造るのか? 彼のような人物が造るワイン、シャンパーニュのレジェンドも認める世界最高峰のワインが、なぜ、他の高峰に比してこれほどあっけらかんとしているのか? その疑問はいよいよ、次回、解決することになる。