文=福留亮司

190周年を迎えたロンジンは、記念の年ということもあり、数多くの復刻モデルを用意してきた。その中から、パイオニア精神が息づく魅力的なパイロットウォッチを紹介する。

『ロンジン スピリット ズールータイム』
ムーブメントはCOSC(スイス公認クロノメーター検定協会)認定機で、2万5200振動/時。シリコン製ヒゲゼンマイを採用しており、耐磁性にも十分配慮されたモデルとなっている。自動巻き(Cal.L844.4)、ステンレススティールケース、42㎜径、39万7100円(ブレスレット装着モデル)

ここ数年のトレンド、復刻モデル

 数十年前の名品を現代の技術で蘇らせる復刻モデルが、ここ数年、時計界のトレンドになっている。その先鞭をつけたブランドのひとつがロンジン。それは長い期間、名品をつくり続けてきた証でもある。

 そんなロンジンが、今年190周年を迎えた。

 そして登場したのが『ロンジン スピリット ズールータイム』。ヘリテージパイロットウォッチの機能をベースにした「ロンジン スピリット」コレクションのGMTモデルである。

 そのインスピレーションの源は、1925年に発表された『ロンジンズールータイム』で、ロンジンで初めての第二時間帯表示ウォッチであった。モデル名にある“ズールータイム”とは、世界各地の標準時の基準となる「協定世界時」のこと。通常はUTCと表現するが、航空や軍事の世界ではズールータイムと呼ぶのである。

1925年に製作された『ロンジンズールータイム』

 ロンジンにおける複数の時間帯を示す時計の開発は古く、その17年前には2つのタイムゾーンを示す最初のポケットウォッチをすでに製作している。国家間の行き来や公共交通を使用する機会が増えてきたことから、当時のオスマン帝国(現トルコ)から依頼されたのだ。それは文字盤に2組の針を持っており、それぞれトルコ時間とフランス時間を表示していた。

 また31年には、世界初のノンストップ太平洋横断飛行を成功させた、アメリカのミス・ビードル号の計器にロンジンが採用されている。そこには時、分を示す針と、2つの同心の24時間ダイヤルが装備されていた。