日光東照宮の雛型
西本宮の祭神である大己貴神 は、667年に天智天皇が近江京を開いた際、以前、こちらの連載でも紹介した奈良県桜井市の大神神社から勧進された。
東本宮の祭神の大山咋神は、もともとこの地の地主神であった神で、背後にある八王子山をご神体山とする。平安時代初期、伝教大師最澄が比叡山に延暦寺を開き、山麓に鎮座する前述の二柱を鎮守神とした。
平安時代には、神は仏が姿を変えて現れたものという考え方(本地垂迹説)が広まったため、日吉大神と総称される神々にも、それぞれに本地仏が当てられている。本地仏とは、この神様はもともとこの仏様だったということを示すもので、西本宮の大己貴神は釈迦如来、東本宮の大山咋神は薬師如来である。日吉大社のたくさんの社を巡れば、神様だけでなく仏様にもお参りできてしまうということだ。
日吉大社には、さらにすごい神様が祀られている。それは東照大権現、すなわち徳川家康だ。1623年、比叡山山麓に家康を神格化して祀る東照宮が造営され、日光東照宮の雛型となったとも言われている。
権現造りと呼ばれる東照宮に特有の形式で建てられた見事な社で、江戸時代までは延暦寺に所属していたが、明治時代初期の神仏分離令以降は、日吉大社の境外社となっている。日吉大社から徒歩10分。比叡山に登るためのケーブルカーが発着するケーブル坂本駅の近くにあるので、延暦寺にも足を伸ばしたい方は、こちらもお見逃しなく。