快適な秘湯宿で湯めぐりの温泉三昧を

客室にも囲炉裏があり、のんびりと寛げる

 木造建築とはいえ、温泉を利用した床暖房を完備するなど寒さとは無縁だ。客室には古民家の材料が使われ、落ち着いた雰囲気が漂う。水周りは現代的な設備を整え、快適に保たれている。本館客室と離れがあり、27室中17室に囲炉裏か火鉢の間がある。火をおこし、薪をくべる。炭がはぜる音や燻された匂いを楽しむなど、ゆっくりとした時の流れに五感が癒される。

季節の移ろいを楽しむ野趣あふれる露天風呂

 温泉は4つの源泉から引き湯し、泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉と単純温泉。あたたまりの美肌の湯と好評だ。福地温泉は、平安時代に村上天皇が療養で訪れたと言われることから「天皇泉」とも呼ばれる。

内湯は丸太の梁が目を引く木造りの風情ある造り

 丸太の梁が目を引く木造りの内湯の外には、野趣溢れる岩造りの露天風呂がある。また無料の貸し切り風呂「山野草の湯」が3つあり、すべてに露天風呂が付く。

貸し切り露天風呂「雫の湯」。山を仰ぐ石造りの湯船。雪見も最高

 小径を散策して向かう川沿いの「かわらの湯」、そして2021年に新たに5つが加わった離れスタイルの貸し切り露天風呂「雫の湯」も楽しみだ。湯元長座では合計12つの風呂で湯めぐりが満喫できるようになった。

貸し切り露天風呂「雫の湯」。湯船、東屋とも、木のぬくもりに溢れる

 夕食は個室または大広間の食事処で炉端料理を味わう(客室により異なる)。季節の前菜、川魚の塩焼きなどに続き、厳選された飛騨牛が登場。ほかに自家菜園の野菜天ぷら、煮物といった山の味覚などが味わえる。

夕食は炉端料理。飛騨牛や川魚、自家野菜料理など

 温泉街には囲炉裏と足湯を設ける舎湯(やどりゆ)があり、福地温泉の宿泊客なら誰でも利用できる。またコロナ禍は中止が続くが、例年雪の季節には舎湯で「あつ鍋」という、鍋や地酒を囲んで旦那衆と語り合うイベントを開催する。シダレザクラの春、カツラの新緑、紅葉、そして雪景色と、四季折々の自然が織りなす美しい色彩も見事だ。季節を変えて何度も訪れたい宿である。

山の静けさを季節の彩りを楽しむ秘湯の宿