取材・文=吉田さらさ 写真=アフロ

北野天満宮 拝殿(国宝)

菅原道真を祀る神社

 初詣シーズンが一段落すると、神社では、合格祈願をする受験生の姿が目立つようになる。とりわけ○○天満宮や○○天神社と呼ばれる神社は受験の神様である菅原道真を祀っているため人気が高く、その総本社とされるのは、福岡県太宰府市にある大宰府天満宮と、今回ご案内する京都の北野天満宮だ。

 菅原道真は多方面の学問に優れ、誰よりも出世が早かった。そして、それをねたむ者によって無実の罪を着せられ、大宰府に左遷された。太宰府天満宮は、その地で非業の死を遂げた道真の遺体を牛車に乗せて運ぶ際に、牛が歩みを止めた場所に建てられたと伝わる。道真の死後、京都では道真を陥れた一族の不幸が相次ぎ、疫病も流行り、御所の清涼殿に雷が落ちて死者も出た。人々はそれを道真の祟りと信じ、その怨霊を鎮めるために北野天満宮を建てた。

北野天満宮 中門(三光門)

 もとはそのように恐ろしい怨霊であった菅原道真が学問の神として親しまれるようになったのは、次々と試験に合格し、異例の出世を遂げたというエピソードがクローズアップされたためだ。江戸時代には寺子屋に肖像画が掲げられるようにもなり、天神さん信仰は庶民の間にも浸透していった。それが現代の「合格祈願=天満宮、天神社」というイメージにもつながっている。しかし実は、天神さんのご利益は学問だけではなく、もっとはるかに奥深い。それを解き明かす鍵が、ここ、北野天満宮にある。