2021年12月23日、全日本選手権にてRDを演じる小松原美里・小松原尊組 写真=西村尚己/アフロスポーツ

 2016年5月、トライアウトがあったイタリアでのことだ。ここで起きたアクシデントが2人を導いた。ロストバゲージのためスケート靴が手元になく氷上に上がれない尊と美里は時間をかけてアイスダンスについて、目標について、生き方について話しあった。そこで相性が合うことを知り、ともに競技に向かうことを決め、翌年には結婚に至った。

 全日本選手権には2016年から出場(3位)、2018年から2020年まで3連覇を果たすなど国内のアイスダンスを牽引する立場になった。昨シーズンは2度目の世界選手権に出場、2019年には果たせなかったフリーダンス進出とともに19位となって日本の五輪出場枠を確保したのである。

 順風満帆であったわけではない。2019年には開幕を前に練習中の転倒で脳震盪などを起こし、一時は重大な影響を及ぼしかねないほどの症状に見舞われた。それでも2人は乗り越えて進んできた。

 尊の「今日までの——」という言葉には、濃密な時間が込められていた。

 

励みになった村元・髙橋の存在

2021年12月25日、全日本選手権で2位となった村元哉中・髙橋大輔組(左)。今後は四大陸選手権と世界選手権の出場が決まっている 写真=松尾/アフロスポーツ

 背水の陣で挑んだ全日本選手権に、プログラムに磨きに磨きをかけて挑み、さらなる高みへと昇りつめることができた背景には、しのぎを削ってきた村元・髙橋の存在がある。

「大ちゃんたちの存在が、練習を頑張るための起爆剤になりました」

 試合直後に語った美里は、大会翌日にも感謝を捧げた。

「ライバルというか、同志というか……。先輩でもあるけれど2人がいなかったらここまでプッシュできませんでした」

 尊も言う。

「ライバルというのはすごくいいことです。ライバルのおかげです」

 村元と髙橋もまた、代表に選ばれた美里と尊を祝福した。真摯に切磋琢磨してきたからこそのつながりがそこにあった。

 その末にオリンピック出場という夢をつかんだ今、大舞台へ目を向ける。

「団体戦は、いちばん足を引っ張る立場であることをしっかり自覚して、少しでも上に上がれるように貢献したいと思います。個人戦では、日本はアイスダンスはレベルがすごく上がっていて、上がしっかり上に行かないと裾野が広がらないと思っているので、できる限りのことをして頑張りたいです」(美里)

「団体戦は足を引っ張らないように頑張りたいと思っています。いろいろなことを乗り越えた強さもあると思っているし、全力で頑張りたいと思っています」(尊)

 アイスダンスを引っ張ってきた誇りと責任とともに、日本のアイスダンスの将来のために。

 2人の目線にぶれはない。