最年少記録の19歳3ヵ月で「四冠」取得

 藤井王位は2021年8月、王位戦で挑戦者の豊島竜王を4勝1敗で下した。さらに豊島叡王に挑戦した叡王戦で、同年9月に3勝2敗で豊島を破り、藤井は三冠目の叡王を獲得した。

 藤井三冠は同年10月から始まった竜王戦で豊島竜王に挑戦し、何と4連勝して最高タイトルの竜王を獲得した。最年少記録の19歳3ヵ月で「四冠」を取得した。

 藤井は、2021年6月まで1勝7敗と大きく負け越して天敵だった豊島に対して、トリプルタイトル戦で巻き返してすべて制した。その転機は、北海道での王位戦第2局だったと思う。

 藤井は将棋界で序列1位の棋士となった。ただそれを意識することはなく、強くなることを目標に取り組んでいきたいという。

 藤井が2020年に獲得した賞金・対局料は、ランキング4位の約4550万円。2021年はさらに増額するが、竜王賞金の4400万円は2022年分として計上されるので、大台の1億円に達するのは先のことになる。

 当の藤井は賞金に関心がまったくないという。仕事で使う必要経費は、研究で用いる高性能のパソコンと将棋ソフト、タイトル戦の対局で着用する和服ぐらいだ。

 

渡辺王将に挑戦して「五冠」を目指す

 藤井四冠は2022年1月から始まる王将戦で渡辺王将に挑戦する。過去2回の渡辺との棋聖戦は、持ち時間が各4時間の1日制。王将戦は各8時間の2日制で、渡辺にとって経験豊富な舞台である。

 藤井は2020年に初挑戦した棋聖戦から、2021年の竜王戦まで、タイトル戦で6期連続でシリーズを制している。このような事例は初めてのことだ。しかし、渡辺との王将戦はかなり難関になると思う。渡辺は「魔王」と呼ばれるほど強いが、「冬将軍」という異名もある。寒い時期に行われる王将戦と棋王戦(2月~)にめっぽう強いからだ。

 藤井が王将を獲得すれば、本年度中に「五冠」を取得する。

 ただ藤井は、記録の達成よりも大事なものがあると思っている。将棋の実力を伸ばすこと、将棋の真理を探究するのが使命だという。「強くならないと見えない景色があると思うので、その地点に立てるように頑張りたい」と語っている。藤井が目指している道は、勝負を超えて哲学的な命題のようだ。