ミシュランシェフ・鳥羽周作「美味しい」を追求する料理とは!?(第1回)
Twitterのフォロワー数は、9万人超え。YouTubeで公開している「鳥羽周作のシズるチャンネル」の登録者数 は21.8万人、視聴回数100万回を超える回もしばしば。SNSでも圧倒的な勢いで注目を集める、ミシュラン1つ星レストラン「sio」のオーナーシェフ鳥羽周作さん。なぜ多くのファンは、鳥羽さんに魅了されるのか。第2回は、『幸せの分母を増やす』がモットーとする鳥羽さんが考える、SNS戦略を聞いてみた。
取材・文=加藤恭子 撮影=山下亮一
「ポテンシャルの最大値化」とは
「うまッ! うまーい、これ。何回喰ってもうまいんだよね」
満面の笑みで、できたての料理をガッツリほお張る鳥羽さんの“試食シーン”は、ファンにおなじみ。YouTubeで公開している人気シリーズ「ミシュランシェフが教えるやばいタレ」シリーズのなかでも「ねぎ塩ダレ(#シズる vol.15)」の視聴回数は、110万回超。ほかのシェフの追随を許さぬ独走っぷりに圧倒される。
「ミシュランシェフの本格的なレシピがウケるのかといったら、実際はそんなことないんです。そうしたチャンネルを見てみると、視聴回数がそれほど伸びず、苦戦しているケースも多いことがうかがえます。そこから疑問をもつべきなのは、“そこに需要はあるのか?”ということ。仕事から帰って来て、子どもがおなかを空かせているのに、だしからとる人はいないでしょう(笑)。アウトプットの場で大多数の人に求められているレシピを提供する。これが、ポテンシャルの最大値化です」
鳥羽さんが重視する「ポテンシャルの最大値化」とは、たとえば車なら、一番速く走れるタイヤを選ぶことと同じ。“いま求められているもの”、つまり多数の視聴者目線を重視した選択が、発信効果の最大値化につながる。当たり前のようだが、そのチョイスこそが難しい。
「我々にとって料理は“クライアントワーク”です。お客さんに喜んでもらえる料理なら何でもつくる、というのがポリシー。たとえばカレーを食べたいといわれたときに“俺、カレーはつくらない主義なんです”という感覚は、一切ありません。自分がどんな料理をつくりたいかよりも、お客さんがたいせつです」
鳥羽さんのモットーは、料理を通して世の中をよりよくすること。料理は、その手段。だからこそ多くの人が心をわしづかみにされるのかもしれない。