四季折々の景色を楽しむ

 ローカル線の楽しみのひとつは、同じ路線に乗っていても四季折々で車窓がまったく違うということ。水が張っている季節の田んぼの話をしましたが、田舎の田園風景も、季節によってまったく異なる表情を見せてくれます。夏は青い稲が鮮やかで青空とのコントラストが美しく、秋が深まれば稲穂が黄金色になって夕暮れ時にはキラキラと輝きます。そして、冬は一面の雪景色。外はしんしんと雪が降る中、暖かい列車に乗って車窓を眺めているのは、守られているような安心感があります。

 天気によっても車窓は異なります。晴天なら見晴らしが良いですし、雨なら雨でまた違う風情を味わえます。たとえば、梅雨の時期に草木がしっとり濡れていて、その緑のトンネルを列車で通っていく瞬間などは、なんとも言えない旅情があって良いものです。

 その瞬間、その場所でしか出会えない車窓からの風景。ローカル線の旅は一期一会だなと、いつも感じています。しばらくコロナ禍で思うように鉄道旅に出かけられませんでしたが、最近、少しずつ状況も改善してきているようです。このまま終息して、また以前のように気がねなく四季の車窓を楽しみたいですね。

 その時がきたら、まず乗ってみたいのは、冬の津軽鉄道。夏には乗ったことがあるのですが、3歳の娘にびっくりするような雪を見せてあげたいのです。東京だと何メートルもの積雪を目にすることはないので、冬を感じられる場所に連れて行きたい! 

夏に訪れたときの津軽鉄道
津軽鉄道ストーブ列車 写真=アフロ

 津軽鉄道には冬限定で運行される「ストーブ列車」があって、昭和を感じるノスタルジックな客車にダルマストーブがついています。そのストーブでスルメを焼いて食べることも楽しみのひとつ。出発駅の津軽五所川原駅から終着駅の津軽中里駅まで、どこか懐かしい雰囲気の中で雪国の冬景色を堪能できます。

津軽鉄道ストーブ列車の車内 写真=アフロ

 それから、紅葉の黒部峡谷鉄道。ここは以前にも紅葉シーズンに訪れたのですが、また行ってみたい大好きな路線です。

黒部峡谷鉄道

 黒部峡谷鉄道は、もともと黒部ダムの建設のために作られました。そのため、山道でも走りやすい幅の狭い線路(ナローゲージ)で、車体も普通の列車に比べて小さいトロッコ電車です。その可愛らしい列車が峡谷沿いを走っていくのですが、息を呑むような錦の紅葉と、エメラルドグリーンに煌く黒部川のコントラストがなんとも素晴らしいのです。

黒部峡谷鉄道の車窓から見た景色。紅葉と黒部川のエメラルドグリーンのコントラストが美しい

 まるで色が襲いかかってくるような圧倒される絶景で、「もう一度見たい!」とコロナ禍になる前に黒部峡谷鉄道への家族旅行を計画していたのですが、娘の発熱であえなくキャンセルに。色の洪水のようなあの素晴らしい景色を、いつか娘にも体験してほしいですね。