メニューにはさまざまな種類の飲み物があるが、迷ってしまったならまずは自慢の珈琲を一杯。ネルで一度に30~40杯たてられ、注文が入ると都度温め直すという今では少なくなったスタイルを守って淹れられている。珈琲豆の焙煎は外注しているが、ブレンドは穂高で行っているというこだわりも。

 
大きなネルで一度に淹れられるコーヒーは、余らせないように日によって調整する

 粟野さんのお母様の好みで、コロンビア主体の、ブラジル、マンデリン、キリマンジャロ、グァテマラという配合。苦味は強くなく酸味が強い「昔ながらの変わらない味」。かつて割合を少し変更したことがあったが、毎日のようにこちらの珈琲を飲んでいる常連たちによる「この味がよくてここに来ているのだから変えてほしくない。」という言葉によって、現在も当時の味が守られているそう。

コーヒー600円。コロンビア主体で苦味が少ないが、深みのある後味

 また、水にもこだわりがあり、利根川ではなく多摩川の水を使用しているようで、粟野さん曰く「この辺りは江戸時代から将軍さまと同じ水を飲んでいる」のだそう。

業者にお願いしている氷もこだわりのひとつ

 本棚には山にまつわる書籍が多数並んでいる。自分の好きな本を読んで過ごすのもよいが、普段手にとらない新しい世界に出会えるのも醍醐味。

本棚には、山や自然にまつわるものから、この街の成り立ちを知れる街歩きの本も

 粟野さんは御茶ノ水の生きる辞典、といっても過言ではないほどこの地域の歴史や出来事に詳しい。どこかに発信された情報ではなく、このときしか聞けない話を対面で伺うのも大変貴重な経験なので、お店が忙しくない時間帯であれば粟野さんと会話しながら珈琲を味わうのはいかがだろうか。まるで晴れた日の山頂で語り合うみたいに爽やかな時間を共有できるかもしれない。

懐かしい甘味にホッとできるカルピス650円
寒い季節に恋しいココア800円。冬季にはホットドリンク「みかんえーど」も登場
唯一のお食事メニュー、トーストはマーガリン&マーマレード付きで450円。ドリンクとともにオーダーできる
右から、御茶ノ水や東京の歴史をたくさん聞かせてくれたマスターの粟野芳夫さん、いっしょにお店を切り盛りするご家族の皆さん