メニューにはさまざまな種類の飲み物があるが、迷ってしまったならまずは自慢の珈琲を一杯。ネルで一度に30~40杯たてられ、注文が入ると都度温め直すという今では少なくなったスタイルを守って淹れられている。珈琲豆の焙煎は外注しているが、ブレンドは穂高で行っているというこだわりも。
粟野さんのお母様の好みで、コロンビア主体の、ブラジル、マンデリン、キリマンジャロ、グァテマラという配合。苦味は強くなく酸味が強い「昔ながらの変わらない味」。かつて割合を少し変更したことがあったが、毎日のようにこちらの珈琲を飲んでいる常連たちによる「この味がよくてここに来ているのだから変えてほしくない。」という言葉によって、現在も当時の味が守られているそう。
また、水にもこだわりがあり、利根川ではなく多摩川の水を使用しているようで、粟野さん曰く「この辺りは江戸時代から将軍さまと同じ水を飲んでいる」のだそう。
本棚には山にまつわる書籍が多数並んでいる。自分の好きな本を読んで過ごすのもよいが、普段手にとらない新しい世界に出会えるのも醍醐味。
粟野さんは御茶ノ水の生きる辞典、といっても過言ではないほどこの地域の歴史や出来事に詳しい。どこかに発信された情報ではなく、このときしか聞けない話を対面で伺うのも大変貴重な経験なので、お店が忙しくない時間帯であれば粟野さんと会話しながら珈琲を味わうのはいかがだろうか。まるで晴れた日の山頂で語り合うみたいに爽やかな時間を共有できるかもしれない。