昔はたんなる生活習慣

「そもそも入浴というものが、昔はたんなる生活習慣というか、汚れを落とす場、といったところだったと思います。現在は、日常の中での非日常とか、贅沢や楽しみを感じられる場として、お風呂というのが見直されています。その中で、さまざまな選択肢が求められているのです」

 そして、その傾向はコロナ禍になってから、より強まっているという。

「コロナ前はメガブランドの商品が強かったのです。コロナ禍で家にいる機会が多くなってからは、より価値のある商品を、それが多少価格が高くても求められるようになってきました。パーソナルな志向ですね。リモートワークをすることが多くなり、以前と比べ外食の機会も減ったため、よりパーソナルなものに投資したいという、目的意識が高まってきたのだと思います」

 そうなると、日用品として入浴剤を使っていた時と、まったくメンタリティが違ってくる。大脇社長は、そこには2つの側面があるという。

「ひとつは入浴時間を投資だと考えること。体の調子が良くなるとか、代謝が高まるとか、しっかり効果効能を求めるということです。もうひとつはマインドフルネスとかもそうですが、メンタルのケアというところもひとつの効能と捉えている傾向があります。入浴時間そのものにきっちりとリラックスをして、自分のメンタルバランスを整える時間、メディテーションをする時間とも考えられている傾向があります」

 いま入浴剤は、身体面の効果効能、心の面の効果効能という、両方の面において求められているというのだ。

コロナ禍が意識を高めた

 皮肉なことに、コロナという未曾有の出来事が自分を大切にする、という意識を一層高めてくれたようで、クナイプの製品にある自然由来や香りなどリラクゼーション効果が、さらに注目されはじめている。

 そのクナイプで、現在も同社の売上の多くを担う主力商品がバスソルト。その源である“塩”は、やはりただの塩ではなかった。

「バスソルトは天然岩塩を使っております。2億5000年前の古代海水がドイツに地底湖として残っているんですけど、その海水を450メートルの地下から汲み上げて、48時間かけて釜を使って炊き上げる製法でつくっています。この塩はレストランでも高級食塩としても使われており、クナイプはバスソルト用に粒度の粗いものを選別してもらっています。その天然岩塩には多数の穴が空いており、表面積が大きいため、エッセンシャルオイルがより浸透しやすいのです。つまり弊社のバスソルトは、この塩から違うということになります」 

 そして、バスソルトに配合している天然エッセンシャルオイルの配合量も、一般的な入浴剤よりも高濃度に配合しているのだとか。

「エッセンシャルオイルは高価なので、通常の会社は割合の上限を決めているのですが、弊社は配合量の下限を定めています。自社の基準以上のエッセンシャルオイルを配合しなければ発売しない。というこだわりを持っているのです」

 2億5000年前の古代海水に含まれる上質の塩と、天然エッセンシャルオイルをふんだんに使ったバスソルトが他とは一味違うのも頷ける話で、リピート率がNo. 1というのも当然の結果であろう。