最終区で大逆転

 創価大・小野寺勇樹と駒大・石川拓慎の差は蒲田(5.9㎞地点)で2分45秒、新八ツ山橋(13.3㎞地点)で1分57秒。新八ツ山橋を石川が区間トップで通過するも、残り10㎞弱で2分近い大差があった。しかし、ここから事態が急変する。

 新八ツ山橋(13.3㎞地点)で1分57秒あった差は田町(16.5㎞地点)で1分17秒に。わずか3.2㎞で40秒も縮まったのだ。15kmを過ぎて大八木監督が乗る運営管理車からも創価大の背中が見えてきたという。その後は、「区間賞と優勝の2つを狙っていけ!」という大八木監督の力強い声が創価大チームにも届くようになった。

 創価大を視界にとらえた石川のなかでも「逆転できる」という気持ちが高まっていく。両者の差は御成門(18.1㎞地点)で47秒。この1㎞は小野寺が3分26秒かかったのに対して石川は2分55秒で突っ走った。

 馬場先門(20.1㎞地点)で15秒差まで追い込んだ石川は最後の力を振り絞る。20.8㎞付近で創価大に追いつくと、しばらく背後についた後、一気にスパートした。

2021年1月3日、箱根駅伝復路、10区で駒澤大の石川が、創価大の小野寺勇樹を抜き、トップに 写真=日本スポーツプレス協会/アフロスポーツ

 最後は石川が両手のこぶしを握り締めてゴールテープに飛び込んだ。ヒーローになった石川は狙い通りに区間賞を獲得。駒大が13年ぶり7回目の総合優勝に輝いた。

 駒大は駅伝2冠を達成したわけだが、両大会ともトップに立ったのは最終区間の終盤だけ。それだけ大混戦だったといえるだろう。2位以下は、創価大、東洋大、青学大、東海大、早大、順大、帝京大、東京国際大の順でシード権を獲得。全日本で3位に入った明大は11位に終わった。

 学生駅伝で最多23回目の優勝を決めた駒大は、過去に箱根4連覇(02~05年)を果たしているが、「駅伝3冠」は一度もない。一方で、今回の箱根Vメンバーで卒業したのは1人(小林歩)だけ。2021年度はダントツV候補として、悲願の〝グランドスラム達成〟と〝黄金時代〟に向けて動き出した。