ナワリヌイ氏の側近、襲撃され大怪我

 ナワリヌイ氏が何者かにより猛毒のノビチョクで暗殺未遂にあったのは2020年のことだが、ユリアさん自身もそれ以前に同じ物質によって襲撃された可能性もある。休暇先で突然具合が悪くなり、その時の症状が自分とそっくりだったと、後にナワリヌイ氏が語っている。

 ナワリヌイ氏は暗殺未遂後、ドイツでの治療を経てロシアに戻り、即逮捕された。一方ユリアさんが反政権を訴えながらも国外で活動せざるを得ない状況下で、ロシア国内にとどまる市民の心を掴み切ることができるかは、今後の動向にかかってくるだろう。

 カーネギー国際平和財団ロシア・ユーラシア・センターのタチアナ・スタノバヤ上級研究員は2月、米ポリティコに対し、国外で活動するユリアさんへのロシア国民の視線が、必ずしも好意的でない可能性を指摘した。ユリアさんが、西側勢力によるプーチン打倒のために利用されているというイメージが付きまとうのだという。

 また、ユリアさんはしばしばプーチン大統領を評して「血塗られた怪物」「組織犯罪の首領」などと強い言葉で批判を繰り返し、夫を殺害したとも公言している。国外にいても安全が保証されるとは言い切れないだろう。

ナワリヌイ氏の側近レオニード・ボルコフ氏(写真:ロイター/アフロ)

 実際、ナワリヌイ氏の側近だったレオニード・ボルコフ氏は3月、亡命先のリトアニアで何者かにハンマーで襲撃され、大怪我を負っている。ユリアさんは最近の米タイム誌とのインタビューで、不本意ながらも護衛付きで行動せざるを得ない事情を明かしている。