たくさんの成長の余地がある

 今、町田は「プリンスアイスワールド」の公式アンバサダーとして携わっている。4月27~29日、5月3~5日には横浜公演が行われる。

「昨年ミュージカル界から菅野こうめいさんという演出家を招聘して、ミュージカルとフィギュアスケートのコラボレーションでショーを制作しています。昨シーズンは『ブロードウェイクラシックス』と題して主に往年の古典的ミュージカル作品を氷上に体現していくことを試みたのですが、今シーズンに関しては『ブロードウェイロックス』ということで、ロック音楽が基調となっています。

 私もまだどんな演目がかかるのか分からない状態でこのインタビューに答えていますが、昨年のクラシックスよりもチャレンジングな試みをどんどん取り入れていってくださるということを、菅野さんをはじめ制作陣からお聞きしています。プリンスアイスワールドのキャストのメンバーは、いわば『スケーティングマスター』と言えます。なぜならば、シングル、アイスダンス、シンクロナイズドスケーティングといった全てのスケーティング能力を備え、それらを十全にショーの演出に取り入れているからです。そうした世界的に見ても稀有なキャストメンバーと共に、菅野さんがいかにフィギュアスケートの新たな魅力を引き出すのか、今から非常に楽しみです」

 新たな公演について触れたあと、こう語った。

「私の役割は主に経営的なマネジメントだったり、プロモーションイベントなど、演目以外の様々な物事をどのようにするかという戦略などを主催者のブルーミューズの皆さんと一緒に考えて、それを形にしているということですね。加えて私個人としては、テレビ局との交渉を行っています。もちろん舞台芸術はライブで見るのが一番ですが、テレビで放送されることでやはりマスに届いていくと思いますので、テレビ局との交渉は非常に大事です。

 このような形でアイスショーに裏方として携わらせていただいていますが、プリンスアイスワールド1つとってみても、まだまだ改革できる部分がたくさんあると感じています。アイスショーの世界には課題はいろいろありますが、一方で裏を返せばたくさん成長の余地があるということです。プリンスアイスワールド公式アンバサダーとしては同アイスショーにしか携われませんけれども、アンバサダーとしてあるいは研究者として、いかにアイスショーの分野をより一層振興できるか、ということを現場で実際に働きながら理論と実践の両面で考えていきたいと思っています」

 

町田樹(まちだたつき)スポーツ科学研究者、元フィギュアスケーター。2014年ソチ五輪5位、同年世界選手権銀メダル。同年12月に引退後、プロフィギュアスケーターとして活躍。2020年10月、國學院大學人間開発学部助教となり2024年4月、准教授に昇任。研究活動と並行して、テレビ番組制作、解説、コラム執筆など幅広く活動する。著書に『アーティスティックスポーツ研究序説』(白水社)『若きアスリートへの手紙――〈競技する身体〉の哲学』(山と溪谷社)。4月27日には世界的バレエダンサーである上野水香、高岸直樹とともに「Pas de Toris――バレエとフィギュアに捧げる舞踊組曲」に出演、振付・演出も手がける。