文=松原孝臣 撮影=積紫乃

全日本フィギュアで4位、世界ジュニア選手権では銅メダル

 2023-2024シーズン、上薗恋奈は大きな脚光を浴びた。

 国際大会デビューとなったジュニアグランプリシリーズ初戦のイスタンブール大会で2位になると、2戦目のポーランド大会では優勝。ジュニアグランプリファイナルに進出し銅メダルを獲得。全日本選手権ではそうそうたる名前がそろう中で4位、世界ジュニア選手権では銅メダルと表彰台に上がった。

2024年2月28日、世界ジュニア選手権、女子シングルでSPを演じる上薗恋奈 写真=共同通信フォト

 13歳、中学1年生で残した成績なのだから、注目を集めるのは自然なことだった。

「ジュニアグランプリに出ることが目標で、2戦の出場が決まったときすごくびっくりしましたし、すごくうれしかったです。ここまで成績が残せたり、自分の演技を海外の試合でできるとは思っていませんでした。自分の魅力を皆さんに伝えられたかなと思っています」

 飛躍を遂げることができた理由を上薗はこのように語る。

「先生方に教えてもらったおかげなので、すごく感謝しています」

 成績もさることながら、上薗が多くの人の関心を呼んだのは、13歳という年齢を考えれば、抜きん出た表現面の魅力だった。

「ジャンプもすごい大切だと思うんですけど、自分が好きなのは表現ですし、自分の魅力を皆さんに伝えられるようにすることを大切にしたいです」

「自分の魅力」、と2度言葉にした。その内容についてはこう答えた。

「表現ができるところだったり、踊りも好きだったり。そういうところをもっと見せられるように、いろいろなプログラムを踊りこなせるようにしたいなと思っています」

 見せる、いや、「魅せる」と表していいかもしれない。

 

きっかけは浅田真央

 輝きを放つスケーターの出発点は、ある選手との出来事にあった。

「もともと家族がスケートが好きだったので滑りにいったりしていました」上薗は、3歳のとき「名古屋フィギュアスケートフェスティバル」に行った。2014年4月のことだ。ソチオリンピックから2カ月後のアイスショーには、オリンピックに出場した選手たちをはじめ華やかな顔ぶれが並んだ。

 その演技を楽しんだフィナーレで、手を振ってくれたのは浅田真央だった。

「目が合ったような感じでした」

 そのときスケートをしたいと思い、教室に入った。

「小さい頃は友達と楽しくやっていて、自分はジャンプが好きだったので、ジャンプばっかりやっていたと思います」

 スケートに励む中で小学生の頃から大会で好成績を残し階段を上がっていった。

「ジャンプばっかり」だったところから、いつしか表現にも目を向けるようになった。教えてもらっていたのが表現力も大切にする樋口美穂子コーチだったこともあるだろう。