同様に、「成果」に関しても、人事主導ではなく現場で基準を決めている。そして、その成果とは「会社が目指す最終的なゴール(ミッション)」に対する貢献度とゴール達成に向けての進捗度としているのが特徴的だ。

 たとえば、人事の「働き方改革」という業務の場合、「社員と組織の自律性を高める」などの「目的」をどの程度達成しているのかということが評価対象で、副業や長期休制度の導入といった「手段」に対する達成度には重きが置かれていない。

「新制度を導入したり、副業したり長期休暇取得した社員が多ければよいということでなく、社員が制度の趣旨をよく理解し、制度が適正に運用されていなければなりません。でも、それだけでもやはりダメで、社員がどれだけ自律性を持った行動ができるようになり、企業文化や組織風土が変革されたかが大事なのです。人事は成果の評価が最も難しいともいえる業務領域のひとつですが、会社が目指す長期的なゴールに貢献することを、常に意識しています」(萩原氏)

「手段」ではなく、最終的な「目的」を重視する結果志向の考え方は、普段の仕事に対する日常的な評価も同様だという。たとえば、「社内プレゼンの資料がきれいに作れている」といったことは評価対象にはならない。時間をかけて完璧に仕上げた大量の資料で伝わらないプレゼンをするより、ポイントを掴んだ資料で(たとえ多少の誤字脱字があったとしても)、しっかりと内容が伝わるプレゼンが良い、ということである。

「誤字脱字で成果は変わるのか」

 社員の「自律性」を重んじ、結果志向の考えが定着しているのは外資系だから当たり前にできている(日本企業とは別世界の話)のでは、と思う節もある。しかし、実は以前からそうだったのではないのだという。

「外資系企業同士が合併した当社ですが、日本人の新卒採用を続けていたこともあり、外資的とは言えない組織風土だった時代もあります。たとえば、社内資料はもちろん、社内メールであってもビジネスマナーと形式を厳格に守るよう気を遣うなどです。上司の指示を待つ姿勢も強く、主体的に取り組む姿勢があるとは言えない傾向にありました」(萩原氏)