そうした状況を変え、現在の組織風土形成に大きく寄与したのが、2010年の合併後に立ち上がった新しいカルチャー作りの活動だ。組織風土に関する社員意識調査などをもとに、社員主体のプロジェクトが立ち上げられ、今に続く権限移譲、結果志向、自律性を高めるなどの目標などもここで設定された。

 最初は必要に応じて経営陣や人事部門が介入。たとえば、経営に対して遠慮がちな社員の「提案」を促すために、経営陣自らがアドバイスを行ったり、社員の主体的な行動を後押しするといったことだ。そして、その後に社員主体の活動へと徐々に進化させ、5年ほどの歳月をかけて軌道に乗せた。

 この間、それまでの「手段」に労力をかける仕事のやり方を変える社内活動も行われた。「たとえば、社内メールに正式な役職の敬称は禁止といった、メール作成に時間をかけないための具体的なルールなども作られました。最初はそこまでしないと習慣は変わらないのです」と萩原氏は説明する。

 そして、カルチャーづくりのプロジェクトの立ち上げに加わり、社内活動を後押しした同氏自身も、成果のあり方や「結果志向」を改めて強く意識させられた言葉があったという。それは合併前後に着任した役員の次のような言葉だ。

「(社内文書の)誤字脱字で最終成果は変わるのか。それをなくすための時間とエネルギーは、他のことに使うべきだ」

「この言葉を聞いて世界が180度変わる思いがした」と振り返る萩原氏は、一連の社内改革とその後の働き方改革の関係に関して次のように語る。「カルチャーはずいぶん変わりました。社内活動で育んだ自律性や結果志向の風土のもとに、柔軟な働き方がスムーズに浸透していったという面も大きいです」。

 同社が思い切った「働き方改革」を実行できたのは、「外資系」だから当然にできたというわけではなく、その裏にはこうした地道な社内改革の努力があったのである。