加藤氏は2017年6月頃、ビジネスパーソン向けSNSであるLinkedinで、世界で「ピープルアナリティクス」という肩書きを持つ登録者を調べたところ、およそ19万8000人の名が挙がったという。2018年4月末に再度その人数を調べたところ、約79万人だった。1年で約4倍に増えた格好だ。「人事にデータサイエンスを持ち込む流れが世界規模で強まっていることの証し」(加藤氏)といえる。

 またAI(人工知能)やロボットなど、生身の人間以外の労働力をどう職場に組み入れて活用していくかという話題も関心事となりつつある。加藤氏としては、これもHRテックの1領域として組み入れて考えているという。

データが足りない日本企業

 日本企業がHRテックに熱い視線を送るようになった理由としては、米グーグルによる書籍『How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント』(日本経済新聞出版社)の存在も大きいという。書籍で人事データを活用して効果を上げている実例が公開されており、「日本国内の人材業界にまさしく衝撃が走った。それ以来、人事関係者の間ではHRテック、特にピープルアナリティクスがしきりに話題になるようになった」(加藤氏)。

 しかし多くの日本企業はここで「データが足りない」という課題に直面した。ピープルアナリティクスを実践するには、分析にかけられるだけの十分なデータ量が必要となる。「分析するためのデータが揃っていないという『それ以前』の状態にあることを自覚し、足踏み状態にある企業も少なくない」(加藤氏)。

 米国企業は年数をかけて「タレントマネジメント」を実践してきており、その過程でピープルアナリティクスに使えるようなデータが整備されてきた。タレントマネジメントとは「人の能力をいかに活かし伸ばすか」という観点から社員情報を管理することである。組織内での適材適所を進め、社員のスキル強化が狙える。

 ところが「日本企業の場合はデータを蓄積するための取り組みがすっぽり抜けている」(加藤氏)格好だ。タレントマネジメントに限らず、日本企業の人事部門はおしなべてデジタル技術の導入が後手に回っていた。加藤氏はその理由として、(1)人事担当者が頭の中に持っている“データベース”が充実していたこと、(2)人事異動のルールがいわゆるローテーションという形で色濃く残っており、データによるアプローチがそれほど必要とされてこなかったこと、(3)間接部門であることからIT投資が後回しになっており、システム更新が行われていないケースが少なくないこと、などを挙げる。