成長鈍化が迫った方向転換

 ところが1970年代になると、家族のかたちは方向転換をはじめる。高度経済成長期が終わり、勤労者世帯で世帯主賃金の上昇テンポが緩やかになる一方、進学率の上昇で教育費が上昇したことなどを背景に、子育てが一段落した妻のパート就業が増え始めたのだ。

 便利な家電製品が家庭に普及したこと、夫婦が生む子どもの数が減ったことも、妻が働く余力を生み出した。これを上手く掬い取ったのは、拡大するサービス分野の担い手を求めた企業であった。こうしたなか、低下が続いていた15~64歳女性の労働力率も1975年を底に上昇に転じた。

図表1 15~64歳女性の労働力率。労働力率は「労働力人口(就業者+完全失業者)÷人口×100」。(出所)総務省「労働力調査」。

 この時期に見られたのは「夫は仕事、妻は家族のケアと仕事」という“家族役割2.0”への移行だ。

 1986年に「亭主元気で留守がいい」と歌い上げるテレビCMが流行したように、夫に期待される主な役割は健康で働くことであり、家庭における役割はほとんど期待されていなかった。家事・育児は変わらず女性の責任であったし、一部の専門職を除けば、結婚・出産以降も続けられる仕事は少なかったため、妻の仕事はパートなどの家計補助的なものが中心であった。