長く続いた経済停滞にようやく回復の兆しが見え始めてきたものの、景気刺激策の恩恵を直接享受できる企業ばかりではなく、大多数の企業経営環境は相変わらず厳しい。しかしこのビジネス環境の中でも、着実に販路を拡大して売上を増大させるとともに、しっかりと利益を確保している企業もある。単純な価格競争に陥るのではなく、競合他社とは異なるサービスを提供、一方で業務の合理化・効率化を進める企業が成長の軌道に乗っている。そうした企業が例外なく行っている施策が「ICTの活用」だ。これは同時に生き残りのための戦略でもある。ここでは、ICTの一部として「電話」機能を革新し、スマートフォンによる顧客および社内の音声コミュニケーションを競争力強化に結びつけた事例を紹介していこう。
※この記事は実際の事例を基に、架空の企業の取り組みとして構成したものです。
福岡に本社を構えるOA機器販売のA社は、ソリューション提案とOA機器およびシステム導入、保守管理サポートサービスを提供しており、県内に数箇所、近隣各県に一つずつ営業拠点を設置、エリア内で急速に事業を拡大し、シェアを伸ばしてきた。
そのビジネスは、徹底的に顧客に寄り添うスタイルを身上とする。きめ細かい顧客対応・サポートを地道に追求してきた。大手メーカーの系列販売店とは一線を画し、顧客の課題に即応する製品選びと、運用トラブルの未然抑止や迅速解決を図るきめ細かいサポートで、「打てば響く」「呼べばすぐ解決してくれる」と地元顧客に支持されてきた。
しかし課題もある。多くの企業同様、売上拡大・商圏/販路拡大・新規顧客獲得が必須であり、数年前から新たなマーケットを求めて関東圏進出を計画していた。
同社の強みをこの商圏でも際立たせて競争優位に立つためには、各業務から無駄を徹底的に省き、業務効率・生産性を極限まで上げていくとともに、顧客対応力にいっそう磨きをかけていくことが必要だと考えた。そこでこれまでの営業やサポートサービスの無駄をくまなく洗い出してみると、いくつかの改善すべき点が浮かび上がってきた。その中の一つが「電話」にまつわる不合理性だった。
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