文=松原孝臣
「笑って終われたら」
「史上最強」ともうたわれ、全種目でメダルを、複数の金メダルも狙えると期待を集めた東京オリンピック。だが大会が始まると先に行われる種目で成績が上がらないことが連鎖し、結果、混合ダブルスで渡辺勇大/東野有沙の銅メダルにとどまった日本バドミントン。渡辺/東野の混合ダブルス日本初のメダルは大きな成果であり歓喜をもたらしたが、それでも事前の期待の大きさもあって、日本バドミントンは不振に終わったという印象はぬぐえなかった。
あれから3年。パリに挑もうとしている日本バドミントン代表は、東京に劣らない精鋭がそろった。
女子シングルス代表は山口茜と大堀彩。
山口は十代前半から将来を嘱望されてきた選手だ。中学3年生だった2012年、史上最年少で日本代表に選出。高校生のときには世界ジュニア選手権連覇。その後も国際大会で表彰台に上がるのは珍しいことではなかった。
だがリオデジャネイロ、東京と、過去2度のオリンピックでは準々決勝敗退で大会を終えた。特に悔いが残ったのは金メダルの有力候補の1人にあげられていた東京だ。大会を終えて、自分には何が足りないのかを考え抜いた。行きついた答えは、注目と期待によるプレッシャーで力を出し切れなかったことだった。だからこう考えた。
「期待に応えようとしつつも、まず自分が楽しむこと」
吹っ切れた山口はすると2021、2022年世界選手権を連覇。復調を示した。
女子シングルスは山口を含め4名が拮抗し誰が優勝しても不思議はない。また5月に負傷し本格的な練習は7月からであるのは懸念材料だ。それでも自分の力を信じて語る。
「これまでの大会は泣いているので、笑って終われたら」