名品は時間を掛け積み重ねられた伝統の力が生み出すもの。そして物作りの情熱は、やがて過去の名品さえも進化させていく。ロングセラーとヘリテージをつむぎながら誕生したニューデザイン。その二つを知ることで、ブランドの持つ本質と革新性が見えてくる。
写真/青木和也 スタイリング/荒木義樹(The VOICE) 文/長谷川 剛(TRS) 編集/名知正登
ハンドルひとつにもイタリア伝統の手技を込めて
創業者アンドレア・ボルトロッティが1960年代後半に、フェラーラ大学に通う友人のために作ったハンドメイドベルトがブランドのオリジン。イタリアのフェラーラは、20世紀初期からシューズ作りなど皮革産業が盛んな土地。そこで培われた多様な製造技術が、ダニエル&ボブのレザーグッズ作りに大きな影響を与えている。
同ブランドの職人気質を表す一例として、「ジルハンドル」の作り込みは見逃せないポイントだ。一切芯地を用いない3層構造のハンドル(持ち手)であり、極厚ながら手縫いにて調整を加えつつ仕上げることで、握りやすくしっくり手に馴染むよう計算されている。加えて現代的かつ個性的なデザインもまた、ダニエル & ボブの大きな魅力。服装等のトレンドを鋭く読み取り、バッグ作りに落とし込むなど、従来の伝統派のブランドにはない革新的な手法を確立しているのだ。2003年には三様の持ち方ができる「ジャスミン」を打ち出し大きなヒットを記録した。
古来の職人技術を守りつつ、ニーズに則して素材や形態を大胆にアレンジする対応力を備えたイタリアの実力派。これからも目が離せない注目のバッグメゾンである。