日本でペア競技を続ける難しさ
「現実は全く甘くなくて、シングルの練習ですら、リンクの数に対して選手たちがかなり多かったので練習を続けることが大変な状況がありました。。ホームリンクであった新松戸のアイススケートリンクはなくなっていましたし、けっこう離れた場所に毎日通って練習していましたが、高校受験も重なったりしてなかなか通えなくなる時期もありました」
何よりも痛感したのは、ペアをする環境の厳しさだった。
「パートナーをいかに見つけるかという難しさがありますし、そもそも練習環境が、『ペアなんてもってのほか』みたいな感じでした」
ペアは2人で行う分、スペースをとる。シングルの選手ですらキャパシティを超えるような状態の中、練習するのは容易ではなかった。
「実は日本人のパートナーと組んで取り組んでいた時期があります。練習できるのは夜中の2時から3時の1時間くらいしかなかったですね」
そのパートナーとはペアを解消することになった。
将来を考えた。スケートにかかる費用にも頭を巡らした。
「高校生なりに頭が痛くなっていました」
それでもあきらめなかった。
「ペアを始めたとき、2人でやる楽しさをほんとうに感じましたし、もともと自分は高いところだったり、怖いことや人を驚かせることが好きなんですね。ペアで技が決まったときの快感や2人で『いえーい』みたいな感じがほんとうに好きでした。それ以上にスケートそのものが好きだったので、絶対に続けようと思いました」
ここで転機が再び訪れる。いや、自ら転機をつかんだ。(続く)
高橋成美(たかはしなるみ)
3歳でスケートを始める。小学4年生のとき父の転勤に伴い中国へ。当地でペアを始める。2008年から2014年にかけて全日本選手権で優勝。2011-2012シーズンにはグランプリファイナルに日本のペアとして初めて進出、世界選手権では日本ペア初の表彰台となる銅メダルを獲得。2014年、ソチオリンピックに出場。2018年3月に引退したあとはテレビの大会中継時の解説を務めるほか、日本オリンピック委員会理事、さらにはタレントとしてバラエティ番組に出演や演技の仕事など幅広く活躍を続ける。