根底にある変わらぬ思い

2022年12月25日、全日本選手権表彰式、コーチのステファン・ランビエールを胴上げする宇野と2位の島田高志郎、宇野のトレーナーの出水慎一 写真=長田洋平/アフロスポーツ

 ショートプログラムに先立ち、その日の朝に実施された公式練習で、氷の感触に「スピードが出にくい」と感じた。いつものようにジャンプを跳べばうまくいかないと考え、スピードを落として跳ぶことにした。全般にミスの目立つ選手が多い試合にあって、落ち着いた演技を見せてトップに立った。

 NHK杯でコーチの言葉があったとはいえ、それをきっかけにして気持ちを切り替えられたこと。エッジの問題にすかさず対処できたこと。全日本選手権における氷の状態の判断。

 それらを可能にした要因は、全日本選手権で語った次の言葉に象徴的に表れている。

「(調整が)うまくなるというか、年々たくさんのことをしてきて、僕は一つの試合に懸ける思いが、ほんとうに強くやって来たからこそ、何一つ投げ出さずにやってきたからこそ、状況が分かってきたので、それがしっかりいかすことができたと思います」

 年数を重ねてきたからではない。どこまでも真摯に練習に打ち込み、どの試合もおろそかにすることなかったからこそ、そこで経験を得ることができて、糧として身に着けることができた。宇野の言葉はそれを伝えている。

 その根底にあるのは変わらぬ思いだ。NHK杯で優勝したあとの取材の場で、宇野は言った。

「より高みを目指す部分があって、オリンピックや世界選手権が終わった後に決して失速することなく、スケードと向き合えています」

 もっと高く——その延長線上に、世界選手権がある。

 今シーズンを過ごしてきて得た糧や成長を見せれば、おのずと結果もついていくことになるだろう。