シャネルとの関係

左・マリー・ローランサン《わたしの肖像》1924年 油彩/キャンヴァス マリー・ローランサン美術館 © Musée Marie Laurencin 右・マリー・ローランサン《マドモアゼル・シャネルの肖像》 1923年 油彩/キャンヴァス オランジュリー美術館  撮影=JBpress autograph編集部

 展示の中で最も力が入れられており、なおかつ興味深いのは、シャネルとの関係を浮き彫りにする絵画や資料である。ローランサンとシャネルには共通点が多い。同じ1883年生まれであること。アーティストたちとの交流の延長に舞台衣装や舞台装飾も手掛けていること。時代を代表する女性アイコンとして成功し、同時代のセレブリティから多くの仕事依頼を受けていたこと。

マリー・ローランサン《牝鹿と二人の女》 1923年 油彩/キャンヴァス ひろしま美術館

 共通の顧客や知人も多い二人であるが、ローランサンが描いたシャネルの肖像画に対し、シャネルが描きなおしを要求するもローランサンが譲歩しなかったなど、決して友好的と呼べる関係ではなかった。ローランサンは「あんな田舎娘に折れてやろうとは思わなかった」と語っている。はかなげな女性を描くローランサンだが、本人は意外と頑なに自分を通す。

左・ガブリエル・シャネル 《デイ・ドレス》 1927年頃 神戸ファッション美術館 右・ガブリエル・シャネル《リトル・ブラック・ドレス》1920-21年 桜アンティキテ 撮影=中野香織

 とはいえ、ローランサンの描く肖像画の女性たちはシャネルを着ていることが多いし、シャネルがデザインした帽子をローランサンが愛用し、作品にも反映させていたというあたりに、直接的ではなくとも両者が手を携えてファッションによって時代の空気を創り上げていったことがわかる。

左・マリー・ローランサン《黒いマンテラをかぶったグールゴー男爵夫人の肖像》 1923年頃 油彩/キャンヴァス パリ、ポンピドゥー・センター  右・マリー・ローランサン《ピンクのコートを着たグールゴー男爵夫人の肖像》 1923年頃 油彩/キャンヴァス パリ、ポンピドゥー・センター 撮影=JBpress autograph編集部