2 :レトロな国産時計好きの気持ちが分かっているデザインの再解釈
「デザインは当時の資料を参考に『チャレンジダイバー』を大いに継承しています。ただし、単なる懐古的な時計ではありません。当時と同じ41mmという、現代のダイバーズウォッチとしては小ぶりなサイズを実現しつつ、厚みは当時よりも1mm程度薄くなっています。」
外装は『チャレンジダイバー』がステンレススチールに対して、チタニウム。
「スーパーチタニウム™は耐傷性や耐食性が高いだけでなく、肌に優しく、軽いので装着感はとてもいいですよ。」
二人に促されて腕にはめてみたところ、驚くほど軽く、腕に馴染む。ダイバーズウォッチは回転ベゼルのせいもあって、時計の上面が重く感じられ、接腕感とでもいうべきバランスが、いささか悪くなりがちなものだけれど、この時計にはそれがない。回転ベゼルまでがスーパーチタニウム™で造られていることも影響しているのか?
しかも、そのエッジの造形の、魅力的なことよ。角度によって、このベゼルのエッジはダルく見える。技術的に頑張っていないステンレススチール製のそれのように……
「そうなんですよ! このとろっとした印象は決め手のひとつでした。」
と杵鞭さんもどうやら、気に入っているポイントだったようだ。社内でチャレンジダイバーをシンカさせるとしたら? というデザインコンペが行われたという。
「このあたりはどう解釈するか、デザイナーによって変わるところでした。『シチズン アテッサ』のようなシャープな造形でシンカさせるアイデアもありました。一方、今回最終的に採用したデザインは、ご覧のように、甘い雰囲気があるんです。ケースが丸みを帯びているところもそうで、これらが全体の印象に70年代のテイストを与えているとおもいませんか?」
それでも全体の印象は、騒々しさがなく、シャープ。あるいは静謐だ。殿堀さんは言う。
「チャレンジダイバーの印象を変えないようにデザインしたのですが、いくらかのアレンジがあります。これはチャレンジダイバー発売時には制定されていなかったISOのダイバーズ規格に、プロマスターは準拠したダイバーズウォッチだ、ということも関係してくるんです……」
いよいよ、シチズンの中でもベテランデザイナー、殿堀さんの口からデザイン秘話が語られる。