歴史や人々の営みを感じるレトロな駅舎
鉄道の魅力のひとつとして、私が夢中になっているのがレトロな駅舎です。もともと建築を見るのが好きだったこともあり、明治や大正時代に建てられた駅舎や、昭和を感じさせるノスタルジックな佇まいの駅舎を見るとときめいてしまいます。
こうしたレトロな駅舎は、一見するとモダンで洋風なのに、日本の棟梁があれこれ工夫しながら作ったんだろうなと思える和風な部分が残されているのも楽しい。たとえば、窓はお洒落なステンドグラスを使っているのに屋根は瓦葺きだとか、昔の人たちの遊び心を感じる和洋折衷な感じがなんとも可愛らしくてキュンとします。
あるいは、ぼろぼろになった下見板張りの壁などを見ると、「頑張ってるね」と思わず声をかけたくなる時もあります。戦時中の機銃掃射の弾痕がまだ残っている駅舎ではその時代の人々に想いを馳せて、戦争の時代からよく燃えずに残ってきたなと感慨深くなります。
駅というのは、ただ人が乗ったり降りたりするだけの場所ではありません。人々が集まり、人と人とをつなぐ場所。皆の家のような場所として、多くの人の営みを見つめてきました。初めて降りた駅でもなんだか懐かしい気がするのは、誰でも原風景の中に鉄道の景色があるから。鉄道は時を超えてずっと走り続けていて、昔の人とつながっていると感じさせてくれる存在なのだと思うのです。だから廃線になってしまうと、まるで駅の命が消えてしまうように寂しく感じるのでしょう。
最近では、1924年に建てられた原宿駅の旧駅舎が去年の夏に解体されました。資材を再利用して旧駅舎の外観を再現した建物が建てられる予定ですが、おそらく雰囲気はだいぶ変わってしまうでしょう。それでも再現することが決定したのは、人々の旧駅舎への深い思い入れがあったからだと思います。