東京都現代美術館のエントランス

 今回のコロナ禍は日本の展覧会が生まれ変わるきっかけになるかもしれない。

「日本の美術館や博物館、あるいは展覧会の世界は国際的に見たらかなり歪んでいます」──。こう指摘するのは、『美術展の不都合な真実』(新潮社)の著者、日本大学芸術学部教授の古賀太氏だ。古賀氏は、かつて国際交流基金で日本美術の海外展開に携わり、その後勤めた朝日新聞社では文化事業部でさまざまな展覧会の企画を手掛けた。『美術展の不都合な真実』では、展覧会企画の当事者だった経験をもとに、日本の展覧会が世界の美術界のスタンダードからいかに外れているかを明らかにしている。

古賀 太(こが・ふとし)氏
1961(昭和36)年福岡県生まれ。九州大学文学部卒業。国際交流基金で日本美術の海外展開、朝日新聞社で展覧会企画に携わる。2009年より日本大学芸術学部教授。専門は映画史、映像/アート・ビジネス。訳書に『魔術師メリエス』、共著に『戦時下の映画』等がある。

 たとえば日本の美術展が特異なのは、新聞社やテレビ局といったマスコミが企画し、主催することだ。新聞社やテレビ局は、収益事業として展覧会を企画し、海外の美術館に何億円もの借用料を払って作品を借りてくる。そして、自社の新聞やテレビなどのメディアを使って大々的に宣伝して集客する。その結果、展覧会が始まると、入場に1時間以上かかる行列ができ、館内は「押すな押すな」の大混雑となる。そうした展覧会の形は、日本特有のものと言ってよい。

 だが、ウィズコロナ時代、「密」を招く展覧会は禁物だ。今までのように大々的なプロモーションで世の中の注目を集め、来館者を大動員する「イベント」は開催しにくくなるだろう。

 一方、鑑賞する側にとっては、美術館との付き合い方を見直すべきときが来たと言ってよい。美術館という場所の本来の魅力を再発見するチャンスでもある。

 では、今「本当に足を運ぶべき」美術館はどこか。古賀氏にお勧めの美術館を5つ挙げてもらった。(以下、古賀氏談)