国が避難指示の解除を求める理由

日野:双葉町と大熊町は福島第一原発のあるところなので、汚染の状態は最も深刻です。

 放射線量の高さに応じて「避難指示解除準備区域」「居住制限区域」「帰還困難区域」という3つの区分がありますが、「帰還困難区域」とは「戻れない」という意味です。その区域の土地や建物の価値がゼロであるという状態です。双葉町は全体の96%が帰還困難区域と判断されました。

 やがて、一部は除染して避難指示解除が出ました。除染して避難指示を解除した区域を「特定復興再生拠点区域」と呼びます。現在、井戸川さんの双葉町のご自宅がある場所は、中間貯蔵施設の用地内です。ここはいまだに帰還困難区域です。

【関連資料】
特定帰還居住区域復興再生計画(福島県双葉町)

──そのような状況にもかかわらず、国は避難解除をして「皆さん帰還してください」と言っているのですか?

日野:いえ。国は「避難指示を解除させてください」とだけ言っています。避難指示を解除したら、賠償は打ち切られるし、避難している方々にも税金がかかってくる。ですから、今のような状況では、避難している人たちは解除されては困るのです。

「なぜ汚染しているところに帰らなければならないのか」ということです。でも、国は「帰りたい人もいますから」という説明を繰り返してきました。

 この状況が一昨年まで続いていました。本当に国は住民に戻ってほしいと思っているかというと、私は懐疑的です。

──つまり、避難指示を解除して賠償はやめたいけれど、本当に帰るべきかどうかは明言しない。

日野:そうです。「帰れとは言っていない」という表現です。とにかく避難指示を早く解除したい。避難指示の対象の方々が、その後どこに行こうが、戻ろうが、その部分に関しては関心がない。