日産のEV「リーフ」(写真:筆者撮影)
  • 電気自動車(EV)市場の伸びが鈍化している。逆風が吹くなか、本格普及に向けて必要なことはなんだろうか。
  • 電池コストの削減や航続距離の伸長などのカギになると見られる全固体電池については開発競争が加速しており、日産自動車はパイロット生産ラインを公開した。
  • だが、本格普及に向けて必要なのは革新的な電池だけではない。(JBpress)

(桃田健史:自動車ジャーナリスト)

 日産自動車(以下、日産)は4月16日、横浜工場(横浜市神奈川区)で全固体電池のパイロット生産ラインを公開した。今年8月に各工程の設備を搬入し、来年3月に稼働を開始する予定だ。

 今回、現地視察取材会に参加したが、現状ではこれまでエンジン部品の加工などで使っていたスペースをリノベーションし、新しいエアダクトや壁などが設置された状態だった。

 ここでは、電極を構成する部材を混ぜる電極工程、パウチ型のセルに仕立てる工程、複数のセルをモジュールにした上で電池パックにする工程、さらに化成工程の4段階を行う。

 2027年までを開発フェーズと位置付けており、量産は2028年を見込む。

日産横浜工場で建設が進む、全固体電池パイロット生産ライン(写真:筆者撮影)

 全固体電池は、リチウムイオン電池の一種で、正極と負極の間にある液状の電解質を固体の電解質に置き換えたものだ。これにより、電池のエネルギー密度、熱に対する耐久性、安全性、またコバルトなど希少金属を使用しないことでの素材供給におけるリスクの削減など、従来のリチウムイオン電池が抱えていた課題の多くを解決するとされている。

 トヨタ自動車、ホンダ、そして海外の大手自動車メーカー各社も基礎研究をおおむね終えており、今後は量産に向けた開発ステージにシフトしようとしている。

 そうした中、2000年代末から2010年代初頭に「リーフ」を投じていち早くEVの量産化に成功した日産としては、全固体電池についても量産をできるだけ早く実現したい考えだ。