(植村公一:インデックスコンサルティング代表取締役社長)
前回の記事「五輪後に火を噴く老朽インフラ、誰の金で直すべきか」で、今後、老朽化が深刻になる社会インフラの更新や整備にコンセッション(注)などPPP(Public Private Partnership:官民連携)の手法を活用すべきだと書いた。今回はなぜ日本でPPPの活用が進んでいないのかという点を論じたいと思う。
注:PPPの一手法で、運営権を一定期間、民間の運営主体に売却すること
日本は諸外国と比べてPPPの活用が盛んだとは言えない。国直轄の空港のコンセッションは進んだものの、有料道路や上下水道などの社会インフラはまだ道半ばだ。PPPは官民連携であり、完全民営化とは異なるが、国、特に地方自治体には権限縮小と既存組織の人員削減につながるという警戒感や先入観があるのだろう。
もっとも、日本でPPPが広がらないのは、PPPが真の意味で民間の技術とノウハウを活用する形になっていないことも一因だ。
釈迦に説法だが、PFIとはPrivate-Finance-Initiative(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)の略で、民間の資金と経営能力、技術力を活用し、公共施設などの建設や設計、維持管理・運営などを実施する公共事業の一形態である。質の高い公共サービスを効率的に提供するという目的のため、1990年代前半に英国で誕生した。日本では1999年にPFI法が成立し、これまでに818件のPFI事業が実施されている(内閣府のデータ)。
このようにPFIの目的は、民間の知恵と資金を使って非効率になりがちな公共施設の建設を効率的に進めることにある。ただ、現実を見ると、PFIが建設費用の割高な分割払いにしかなっていないというケースが少なくない。
PFIを活用した場合、行政は施設完成後、事業主体であるSPCに建設や運営、維持管理にかかる費用を毎年支払う。ただ、そのコストが高く、20年なら20年の運営期間のトータルコストで見ると、自治体が公共事業として作るより高くなってしまう事例は枚挙に暇がない。
こういった状況を防ぐためには、民間の創意工夫で建設や運営にかかるコストを引き下げるとともに、事業収入(オペレーション収入)を増やして全体のコストを抑える必要がある。PFIの理念に立ち返れば、それが本来の目的のはずだが、必ずしも現状のPFIはそうなっていないケースが見受けられる。
その最大の要因はPFI法の問題以前に、建設会社や施設の維持管理会社など事業費の支出先に配慮した現場レベルの運用にあると見ている。