「パーパス」の特集号となった2019年3月号の『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(左)と「パーパス」につながるブランド理念の考え方を示した元P&G GMOのジム・ステンゲル氏の著書『GROW 本当のブランド理念について語ろう』(2013年、阪急コミュニケーションズ)。

「今回のブランド刷新(価値再構築)では、ESGやSDGsなどソーシャルの要素を強く意識した形でお願いできませんか」

 企業のブランド刷新や「なりわい」変革のコンサルタントである著者が、経営層や経営企画部門の幹部の方々から最初のミーティングで言われるフレーズである。

 さらに2019年に入ってからはESGやSDGsに加え、「パーパス(PURPOSE:以下パーパス)」というキーワードが飛び交う頻度が急速に増えているようになったと感じていた。

 そうこうしているうちに、2019年3月号の『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』(ダイヤモンド社)が「パーパス」の特集号になっているのに気づいた。

「パーパス」は企業が自らのブランディングやブランド基軸でのビジネス展開を考える上で、間違いなく「旬のテーマ」になりつつあるようだ。

 ブランドには企業の利益創出だけでなく、広く社会に貢献する「パーパス」(存在理由)が求められる。つまり、優れた「パーパス」は企業がビジネスを遂行する上でのガイドラインとなるだけでなく、企業で働く従業員のモチベーションと結束を高め、ひいてはお客さまからも持続的な信頼・期待と強固な支持を獲得することで企業に継続的な利益をもたらすという図式だ。

 それでは、今、なぜ「パーパス」が企業のブランド刷新の切り札として「再び」脚光を浴びるようになったのか。

 今回の連載では『IoT Today』らしく、データ時代における企業間の競争ルールのゲームチェンジという観点に限定フォーカスして、その理由を追いかけてみたい。

デファクト・スタンダードからデジュール・スタンダードへ

 以下のスライドは、CES 2019の主催者CTAがメディア向けに配布した説明会用資料(CTAマーケットリサーチ部門スティーブ・コーニングによる)である。

CES 2019の主催者CTAによるプレス向け資料。
拡大画像表示