「安心感」と「安全」の職場がトライを引き出す

――「安心感」は「失敗したくない」という傾向が強いという若者たちに、トライを促すヒントにもなりそうですね。

桑原 そのとおりです。私たちは2005年くらいから、新人たちがのびのび育っている職場を調査し続けた結果、そうした職場には「何を言っても受け止めてくれる」と言う「安心感」や、「今はうまくいかなくてもいつかできると信じてくれている」という「信頼感」がある、ということが分かりました。

 こうした安心感や信頼感が土台となって、トライや自由な発想、コラボレーションが生まれるのです。若者に「やる気」や「能力」がないのではなく、ダメ出しなどの厳しさには慣れていないゆえに「不安や恐れ」を感じてしまい、本来持っている力が出ていないだけなのです。

 そうしたことを裏付けるものも出てきました。それは、社員が自律的に行動する次世代型組織モデルとして話題になった「ティール組織」における「安心・安全」への言及や、パフォーマンスの高いチームのカギとして昨今注目されている「心理的安全性(psychological safety)」という概念などです。

 また、若者に限らず「失敗」に対して、多くの日本人はネガティブに捉えすぎだと思います。私は、サッカーの本田圭佑氏の「(日本と違い)世界では、失敗は次の学びやイノベーションにつながるからと肯定的にも捉えられる。日本でも失敗の定義を『何かにチャレンジした人』に変えたほうがいい」という趣旨の発言に非常に共感します。

 上司世代も、たくさん失敗をしてきているはずです。ですから、100件訪問して営業成績を上げたという成功体験だけでなく、「新人の頃は、こんなミスをした」といった失敗談こそ、たくさん、若者へ伝えてほしいですね。そうした等身大の関わりが、若者の安心感につながり主体的なトライが生まれていくと思います。

「上下関係」の呪縛は若者と接することで克服する

――桑原さんは、若者に対して「学び」があると気づかれたわけですが、そうしたことに抵抗感がある、という上司世代の方も多いのではないでしょうか。