桑原 日本には、たった1年の差でも、先輩後輩といった年齢の「上下関係」意識が根強くあります。そのため、「上」の者が「下」の者に学ぶ、ということに強い抵抗感があるのだと思います。言葉遣いやマナーなど、ビジネスの基本が未熟な部分があれば、なおさら教えるモードになりがちです。

 しかし、最近の強いスポーツチームを見ると、先輩後輩の関係はとてもフラットです。中には、先輩が雑用をして下級生の練習時間を増やすことで常勝軍団になったチームもあります。企業に限らず、年齢の「上下」にこだわっていては強いチームは作れなくなっていくと思います。

――どうすれば、抵抗感をなくせるでしょうか。上司世代の方へアドバイスをいただければと思います。

桑原 一番良い方法として、どんどん自分から若者の中に飛び込み、若者と接していくことをお勧めします。たとえば私は今、NPO法人青春基地で、大学生(若者)が高校生(若者)に教育を届ける活動に参加しています。

 生徒たちの想いやよいところを引き出し自発的なトライを生んでいくという目的は私たち企業と同じですが、その教育論や考え方にはとても新鮮なものがあり、私にとっては毎回が「学び」の宝庫です。

 経験豊富な上司世代であっても、これまでの知識や経験則で今後のビジネス環境を生き残れると自信満々な方は少なく、新しい学びが必要、ということには薄々気づいている方が多いと思います。

 だからこそ、もし若者の言動に自分たちの常識とは違うという「違和感」を感じたら、それを「好奇心」に変え、学びにつなげてみてはいかがでしょうか。「訪問件数に意味を感じません」というメンバーがいたら、「これだから今の若者は・・・」と諦めたり、頭ごなしに叱るのではなく、「どうして?」とフラットに問いかけてみると、その答えには意外な学びのヒントがあるかもしれません。

 これは、若者に迎合するという意味ではなく、お互いのよいところから学び合おうということです。それが、上司世代を成長させてくれるヒントにもなると思います。もちろん、若者に対して教えることもたくさんあるでしょう。ですから、上司世代にとって若者は、教える相手であり、学ぶ相手でもある。それは若者も同様です。

 若者と上司世代がお互いに学び合えば、非常に強く愛着もわく組織が出来上がると思います。そしてそれは、この先の見えない時代に、幸せに働くということにもつながるのではないでしょうか。