「最初から最後までクライマックス症候群」というのは、現場は今の仕事をこなすのが精一杯で、もう工夫を考える余裕がない状態で起きます。社員全員が集団で皿回しをしている姿を想像してください。もう持てないくらいの数の棒の先に皿を乗せ、落とさないように必死に回し続けることだけに集中している、余裕がない状態です。

 ふと考え事して手が止まると皿が落ちてしまう恐怖に苛まれ、今の仕事を一生懸命やり続けることしか考えられなくなるのです。

 また、集団皿回し状態にあっても何か工夫をしなければならないとなれば、「目の前ですぐ出来そうな効率化」を先に考え実施する心理が働きます。これ先の工夫ですからわずかな効率化は達成できても、抜本的な効率化には程遠いものになるでしょう。

 なぜなら、新しい成果がでるノウハウを思いついたとしても、そのノウハウは誰もがすぐできないので、できるようになるには時間と負荷がかかります。

 現場は忙しいので余計な負荷やストレスがかかるものは避けたがる傾向があります。研修で学んだ新しいスキルを現場で試すより、今までの延長のやり方のほうが、先々が読めるし、慣れているのでラクだからです。現場は「新しいスキルを試した結果、納期が遅れてしまいました」では済まされません。成果につながるかどうか確実性がないプランを考えるより、目先でちょっとした我慢と工夫で出来そうな効率化の目標と打ち手を考えざるを得なくなるのです。

 デートの前に、意中の相手にふられないようにするために、「痩せよう。それには食べないでいるのが一番」と考えるようなものです。これではデートのときには多少スリムになっていても、すぐにリバウンドするのは確実。次のデートが近づくたびに断食を繰り返すことになれば、ストレスを溜め、体調を崩し、体力も落ちていくという悪循環になってしまいます。実は今、企業の現場もこうなっているのです。だから目標や期限が過ぎると組織は元の非効率状態に戻ってしまうのです。

力の「入れ所」「抜き所」を示さないと現場の仕事が激増する

 働き方改革は「稼ぎ方改革」でもあります。効率化ばかりではリバウンドを繰り返し、組織が不健康になっていくだけ。

 それは分かっていても、今より新しい方法で稼ぐことを考えるのは難易度も高い上、現場にはその余裕もない――そんな時にはどうすればいいのでしょうか?

 今の仕事の「力の入れ所」と「抜き所」をハッキリ可視化すればいいのです。

 オセロで勝つための定石は盤上の「四隅」を押さえることだということは、多くの人が知っていると思います。勝つためには、四隅を押さえることに力を注ぎます。仕事でも同様に、力の「入れ所」を可視化して共有することが成功に至る鍵なのです。