まず、なぜ実績や強みではダメなのでしょうか。それは、あなたよりもっと高い実績や強みを持った人がいれば負けてしまうからです。「無事定年退職を迎えました」という横綱はいないように、強みや実績で永遠に一番を取り続けることは現実的でありませし、しんどいものです。

 その上、実績は比較しやすいのでライバルと横並びで評価されてしまいます。その結果、どんぐりの背比べになり、社外の同クラスとの違いが出にくいのです。

 想像してみてください。同じ営業職の経験者でも、「シャープで29年勤めた」「ソニーで30年勤めた」「パナソニックで31年勤めた」という3人が応募してきたら、力量がどれだけ違うかは分かりにくいものです。前の勤務先でどれだけ「優秀だ」とされていても、社外で相対比較されると意外と差がつかず、ライバルだらけになってしまうのです。

 それでは、なぜ「ありがとう」の声を集めるのでしょうか。それは、「ありがとう」の声は「あなたが仕事を通して相手に感じてもらえた価値」を言語化したものだからです。

 同じ事務の仕事をしていても、「速くてありがとう」「正確でありがとう」「気が利いてありがとう」など、周りからもらえる「ありがとう」の声は人それぞれ違うものです。この「ありがとう」の中身があなた独自の持ち味なのです。

 この持ち味は心理学では「資質」と呼ばれるもので、20歳くらいまでに形成され、それ以降はあまり変わりにくい特徴(性格、価値観、根本的な動機など)です。資質は「心の利き手」とも言われ、ラクにスイスイできてしまうものです。実際「ありがとう」の声を集めてみると、そんなに意識しなくてもできてしまっていることが多いものです。