ほめてやらねば人は動かじ、任せてやらねば人は育たず

 藤咲氏は、部下を育成するときの心得がよく分かるものとして、山本五十六の次の言葉を挙げる。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
 やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」
(山本五十六)
 

「『褒める、認める、感謝する』ことの重要性とともに、上司は部下に対する包容力や受容力、任せた結果の責任はとる覚悟が必要ということが分かる言葉です」(同氏)

 そして、このように部下の育成は大変だが、それを乗り越えれば上司自身の働き方にとってもプラスになると、藤咲氏は主張する。

「部下がいつまでたっても成長しなければ、プレイングマネジャーとして自分の仕事にも追われる上司は、部下の面倒を見るだけでへとへとになってしまうでしょう。仕事に追われ、上司自身も主体性のない働き方を強いられることになります。部下の育成は、上司の役割であると同時に、上司自身のためになることなのです」

 ちなみに、前出の「日本のミドルマネジャー白書2016」によると、「仕事上の問題、悩み」は「部署の人材が不足している」(41.7%)が1位だった。いくら嘆いても、良い人材を集めることは、ほとんどの場合、難しい。今いる部下を、主体性を持った頼れる人材として育成することが、前向きな解決策となるだろう。

 部下を持つ上司に向けて、藤咲氏は次のように語る。

「部下について悩んでいない上司の方は、ほとんどいません。だからこそ、上司の方には、まず『褒める、認める、感謝する』という習慣を身につけていただきたいと思っています。そうした習慣が、部下と上司自身の働き方を前向きなものへと変えるとともに、幸せな職場づくりにつながると信じています」