あまりにカリスマ過ぎて誰もが批判することをはばかれるが、やっぱりあの人がかの大企業を弱体化させる原因を作ったよね、という人は結構いる。これは、社長の打ち出したプランに誰も異を唱えることができないことから生じる「裸の王様」現象だ。

「科学の5段階法」の採用を

 私は、PDCAサイクルに代えて、科学の5段階法を採用することを推奨する。この方法は科学の方法論であるだけでなく、人間が本能的に備える学習スタイルと一致している。

 赤ちゃんが言葉を習得する際、お母さんがどう言っているかを「観察」する。「お母さんはおなかが減ったときに『マンマ』と言っているのではないか」と「推論」する。「ならば、自分が『マンマ』と言ったら、お母さんはおなかが減っていることに気づいてくれるのではないか」と「仮説」を立てる。そして「実験」してみる。うまくいけばオーケー、うまくいかなかった時は「何がまずかったのか?」を「考察」し、改めて注意深く「観察」し直す。

 恋も一緒。大好きな女の子を「観察」しているうち、動物の話題が好きなのでは、と「推論」する。「動物園で変わった動物がいた、という話題を提供したら面白がってくれるのでは」と「仮説」を立てる。実際に声をかけてみる(実験)。狙い通りに動物の話で盛り上がり、調子に乗って飼い猫の話をしたら顔が曇った。「もしかしたら、ネコだけは化け猫の怪談か、小さい頃の何かによって怖くなったのかな」と考察し、動物以外の話題でも盛り上がれないか、改めて相手を「観察」する。

 こうして、大好きな人との関係を構築していく際にも「観察」から始まる。

 実は、科学の5段解法は、人間が現実を把握し、適切な行動をとるよう修正するために行っている、本能的な思考パターンなのだ。この方法は、ビジネスを改良していく際にも、子どもの学習にも、人間関係を良好なものにしていくためにも、役立つはずだ。

 PDCAサイクル自体は、問題点をきちんと把握して運用するなら、それなりによいものだと思う。しかし「観察」が軽視されやすい手順となっていることに自覚がないと、リーダーが「裸の王様」化していく危険もはらんでいる。ならば、いっそ「科学の5段解法」に則って、ビジネスの改善に努めてみてはいかがだろうか。