また、ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン氏は、その著書『イノベーション・オブ・ライフ』(翔泳社)の中で、人生全体での成功を収めるためには、家庭や地域社会など、仕事以外の要素にも相応の投資を行うことが必要であると述べている。「休む」とは、つまり、これらへの投資のための時間を作ることに他ならないのだ。

 仕事で成功を収めようとしたとき、個人がこのような全人格的な幸福を追求することが必要だし、それが社会的にも許される時代になった。ならば、会社も、個人を支援するために、休み方、ひいては生き方の自由度や選択肢を増やすべきではないだろうか。理想的には、誰もが「休みたいときに」「休みたいだけ」休める組織を作ることが望ましい。

誰もが「休みたいときに」「休みたいだけ」休める組織へ

 では、誰もが「休みたいときに」「休みたいだけ」休める組織にするにはどうすればいいのか。必要なのは、会社全体で、多様な理由で休むことを「お互い様」と思える風土を醸成することだ。

 この風土を醸成するためには、取り組むべきことが大きく2つある。1つは、一定数の従業員が常に「休む」ということを前提にして、人員数の管理やジョブアサインといった人材マネジメントを抜本的に変えることだ。

 もう1つは、人事部門や現場のマネージャーが、多少おせっかいに思えるくらいに従業員個々のライフイベントやライフプランまでを把握した上で、適切なタイミングで、適切な期間休めるように支援することである。ここまで踏み込んで初めて、本当の「休み方改革」が実現するのである。

「ただでさえ人手不足で忙しいのに、休みを多く取らせるなんてとんでもない」と思う経営者・人事担当者は多いだろう。しかし、誰もが「休みたいときに」「休みたいだけ」休める組織を目指すのは、実はイノベーション創発と、高いパフォーマンスを発揮する人材を惹きつけるための必須条件であり、結果的には企業の成長につながるということを、経営者や人事は心に留めるべきである。