これはコメのような基礎食糧も同様だ。コメや麦などの基礎食糧が足りないと餓死してしまう。だから不足することのないように余分を確保する。すると在庫がダブついていることになり、価格が低迷する。

 不足するとみんな食べずにいられないから価格が高騰する。皮肉なことに「命に関わる」商品だからこそ、生産農家が赤字垂れ流しになるくらいに安い価格でしか売れないのだ。

 他方、トマトなどの野菜は「命に関わらない」から、市場原理に乗せても極端な価格形成はしない。高けりゃ消費者は手を出さない。安すぎたら生産者も無理に出荷しない。だからほどほどの価格で売ることができる。

 コメや麦はそうはいかない。ある程度保存がきくため、出荷せずに置いていても在庫があることがバレてしまう。在庫があることを見越して価格が下落するから、出荷調整しても市場価格を調整することが難しい。

 しかし野菜など生鮮物は、出荷せずにいたらそのうち腐って売り物にならなくなる。在庫という概念がなく、出荷された商品の量がすべてだから、容易に市場を引き締めることができる。

 穀物は「命に関わる」からこそ、市場価格の調整が非常に難しいのだ。

農業がGDPに占める割合

 その視点で見ると、そこそこの値段で売れている商品というのは、「それがなくても死にはしない」ものが多い。スマホやパソコンは、今や社会になくてはならないインフラではあるが、持たなくても生きていくのに不都合はない。

 欲しいは欲しいけど、ないならないで構わない。そういう「命に関わらない」商品だから、消費者の心理さえうまく突けば高く売れる。全く、経済というのはアマノジャクなものだ。

 野菜はコメと比べれば高く売れる、が、それでも農業が経済全体に占める存在感は小さいものだ。農業が日本のGDPに占める割合はわずか1%程度。毎日ご飯を食べずにいられないのに、子どもにも「カラダにいいから!」と野菜を食べさせているのに、農業の総売上というのはその程度のものだ。