インターネット社会が定着した現代において、私たち個々のネットワークは、検索結果に合わせたアルゴリズムとソーシャルメディアネットワークの分析によりフィルターがかかり、提供される情報のパーソナル化が進んでいる。

「フィルターバブル」ともいわれている情報のパーソナル化は、使えば使うほどに精度が高まり、自分の興味関心・考え方と一致する意見や情報のみが表示されるようになってくる。

例えば、アドネットワークは興味関心や年齢、性別、職業、地域などでターゲティングされているし、AmazonやYahooからのレコメンドなども、これまでの購入履歴や検索履歴などを基に表示されているものだ。

価値観を固定化する、枠組みの中の情報

自分好みにカスタマイズされ、知りたいと思える情報ばかりが提示される状態は、効率的に物事を進めたい現代人にとっては非常に便利なものである。しかし、本来であれば情報の宝庫であるはずのインターネット上で、決められた枠組みの中からしか情報が得られないという事態は、思考の偏りとともに視野を狭めていく。そして、価値観を固定化してしまう懸念点も持ち合わせている。

フィルターバブルと対極にある言葉として、「セレンディピティ(偶然の幸福)」という言葉がある。ときに、思いもよらない偶然の出来事は、私たち人間に対し、驚きとともに喜びをも与えてくれるものだ。今まで知ることのなかった世界に触れることで、人間は新たな学びを得て、創造性を高めて行く。こうして育まれたものによって、イノベーションが生みだされていくのだろう。

検索履歴を消す、アカウントを外すといったアクションによって、ある程度表示される情報は変わってはくる。とはいっても、PCやスマホを見るたび、そんな設定はしていられない。こうしたフィルターバブルに対する打開策として期待できるのが、AIを活用した近畿大学の取り組みだ。