AI開発を行なっていく上で、機能学習させるために膨大な量のデータが必要不可欠。しかし、日本の場合、個人情報保護の観点により、企業が持っているデータの利活用に厳しい制限があるのだ。かつて「ものづくり大国」と呼ばれていた日本が、米国と比べAI研究が大きな遅れを取っている理由を探った。

以前、IoTTodayの記事「世界と同じ土俵に立てない? 1年遅れの日本のAI開発」で、人工知能研究の第一人者である、東京大学特任教授の中島秀之氏にインタビューを行なったところ、「Amazon Echoなどの海外製品が日本のプラットフォームになれば、膨大な日本語のデータが海外企業に収集されることになります。そうなると日本製品は土俵にも上がれなくなる」と、国内のAI開発の遅れを問題視していた。

そんな中、2017年中にAIを搭載した音声アシスタントの海外製品「Google Home」の日本発売が決定した。「Amazon Echo」もまもなく日本発売されるのではと噂されており、いよいよ懸念されてきた事態が現実のものとなりつつある。

テクノロジーに関する意識、34カ国中で日本は最下位

ようやくビジネスにAIを導入する動きを見せてはいるものの、まだまだ、日本の巻き返しは難しいのが現状だ。総務省の「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」によるアンケート結果を見ると、人工知能AIの普及に向けた今後の対応や準備について日米就労者の意識が大きく違っている。

米国の就労者は、AIの普及にそなえて、スキルや知識を身に着け今のビジネスを続けようと対応・準備をするという人が多く見られ、AI導入への対応・準備を重視する姿勢がうかがえる。その一方、日本の就労者は「対応・準備については特になにも行わない」という人が過半数を超えており、米国に比べ日本人就労者はビジネスに対しAI活用への実感に乏しいのが現実のようだ。

出典:総務省「ICTの進化が雇用と働き方に及ぼす影響に関する調査研究」平成28年

また、ランスタッド社が34の国と地域を対象に行なった理系人材ニーズに関する調査によると、さらに衝撃的な結果が出ている。

なんと「業務のデジタル化に対応する準備ができていると思う」の質問で、米国が80、中国が90以上と高い結果が出ているのに対し、日本人就労者は42.5%と極端に低く、最下位という結果だったのだ。

他国と比較して極端に低い数字から、日本はテクノロジーに対し、個人の意識が低い傾向にあることがわかる。

出典:ランスタッド社「理系人材ニーズの高まり、新興国の他、米国でも半数が実感」

近年、外資系企業の増加とともに米国のような実力主義を取り入れる企業が増えつつある。しかし高度成長期以来、年功序列制度、終身雇用制度など、古い社会システムで成り立ってきた日本企業の中には、イノベーティブな変化に対応できないところも数多く残っているのが現状だ。