多彩なジャンルの名品に心躍る
「明治美術狂想曲」では幅広いジャンルの美術品が紹介されており、飽きることなく鑑賞に臨める。見惚れてしまった作品をいくつか。
河鍋暁斎『地獄極楽めぐり図』は明治2~5年の制作。江戸・日本橋の小間物問屋勝田五兵衛の娘・田鶴が早世したことを受けて、暁斎が追悼供養のために制作した画帖で、田鶴が冥界の各所を巡る道中の様子が浮世絵で表されている。
その道中が何とも楽しい。三途の川を渡り、勝田家が贔屓にする歌舞伎役者・五代目尾上菊五郎を描く三代歌川豊国に出会い、芝居小屋を楽しみ、汽車に乗って極楽を目指す。江戸時代の浮世絵にはない“明治の自由な空気”があふれており、思わず笑みがこぼれてくる。
柴田是真『変塗絵替丼蓋』は、鉢に添えられた蓋10客のセット。この10客の蓋がまさに超絶技巧! 同じものは一つもなく、それぞれの蓋に青銅塗、紫檀塗、茶銅塗など異なる技が用いられている。さらに蓋の表面に施された木目や蟻などの模様は、すべて漆芸によるもの。その細かな表現に「明治工芸、恐るべし」と声を上げたくなる。
明治22年に創刊された月刊美術雑誌『國華』の展示も印象的だった。『國華』は現在もなお刊行が続く現存する世界最古の美術雑誌で、2023年4月1日現在、1529号を数えている。学術誌としての評価は依然として高く、今も愛読者は数多い。西洋に追いつけ、追い越せ。明治時代の情熱の炎は、令和になっても燃え続けている。