絶好調の時こそ、古き良きものに学ぶ

国宝 《曜変天目(稲葉天目)》南宋時代(12・13世紀)

 展覧会「明治美術狂想曲」では、腰巻事件をはじめとする騒動や混乱にスポットを当てつつ、明治時代の美術動向を紹介。明治時代は電信、郵便、鉄道など新しいインフラが次々に誕生したエネルギーに満ちた時代だったが、急激な変化は同時に様々な反動や混乱も生み出したのだ。

 たとえば、近年“超絶技巧”として再評価高まる明治時代の工芸品。精巧な細工を施した陶磁器や漆芸品、印籠などは欧米に輸出されて飛ぶように売れたというが、爆発的なヒットにより、徐々に粗製乱造による品質低下が懸念されるようになった。

 そんな状況を危惧した内務省博物局は「観古美術会」を開催。明治以前の古き良き時代の名品を展観し、名品から学ぶことで、美術の水準を引き上げようと試みた。

 展覧会「明治美術狂想曲」では観古美術会の出品作も紹介されている。江戸幕府第三代将軍徳川家光から春日局に下賜されたといわれ、現在は国宝に指定されている国宝『曜変天目』(南宋時代)。運慶の孫である康円によって刻まれた重要文化財『広目天眷属像』(鎌倉時代)。これらの歴史的名品が一堂に会した第一回観古美術会は5銭という手頃な入場料で一般公開され、美術の質の向上に大きく貢献したという。