まちづくり次世代と新しい交流拠点

 露天風呂を併設する大浴場も魅力的だ。内風呂は天井が高くとられ、前面はガラス張りで開放感がある。由布院温泉は湧出量では別府温泉郷に次いで全国第2位。豊富な湯量を誇る無色透明の単純温泉で、柔らかい肌心地で万人に親しまれている。

これは客室専用の内風呂一例。木肌なめらかな湯船に源泉が満ちる

 夕食は、季節の味覚が美しい器に盛られて登場する。地元農家から届く新鮮な野菜をたっぷり使った創作料理。メインは全5種から選択できるプリフィクススタイル。

食にこだわる由布院温泉。玉の湯は地元野菜などを活かした料理

 例えば、和牛の炭火焼き、大分特産の地鶏「豊のしゃも鍋」、クレソンと鴨の鍋など。朝食は和食・洋食から選べ、卵料理は出し巻き卵、スクランブルエッグなど4種類からセレクト。洋食のクレソンのスープは料理研究家の辰巳芳子さん直伝で人気がある。

浴衣でも利用できる「Nicol’s Bar」。作家で環境保護活動家のC.W.ニコルさんの「バーがあったら最高」との声から生まれたという
青い光が照らす夜明け前の中庭。野鳥さえずり、珍しい昆虫にも遭遇

 談話室で「玉の湯」二代目の桑野和泉さんにお話を伺った。

由布院温泉観光協会長を長年務めた「玉の湯」の桑野和泉さん

「まちづくりのスタートを、当時は子供でしたけど、父(現「玉の湯」会長・溝口薫平さん)のそばで見ていたのはよかったと思います。原点を知っているのは強いと感じます。『由布院の魅力は自然環境にある。小さな盆地だけれども温泉に恵まれ、水田が広がる素朴な農村風景が広がっている。これを活かして由布院を癒しの里・保養温泉地にしよう』という原点です」

談話室には地域紹介の本が並ぶ。のびやかな中庭を眺める居心地のいい場所

 桑野さんに、おすすめスポットを教わった。それは「由布市ツーリストインフョメーションセンター・YUFUiNFO(ゆふいんふぉ)」。磯崎新(いそざき・あらた)さん建築の由布院駅に隣接する新しい交流施設で、磯崎さんを師と仰ぐ建築家の坂茂(ばん・しげる)さんが2018年に手がけたものだ。

世界的建築家・坂茂さんによる交流施設「YUFUiNFO」

 ガラス張りの館内に映える巨大な柱の曲線美、そして紙製の管・紙管(しかん)のインテリアなどは独創的で素晴らしい。館内にはインフォメーションデスクや旅のライブラリーがあり、由布院の情報にふれられる。